大地丙太郎文庫

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くのいちせぶん3話 02

16

武甲丸は燃えていた。
藍さんの黄土くんがカッと地を蹴った。
燃えている武甲丸のボディにほぼ全裸の藍さんの黄土くんが飛び移った。藍さんの黄土くんが鎖の腰蓑に手をかけジャッと伸ばすと腰蓑の鎖が伸びた。先端の柄のそのまた先端からジャックナイフのように刃が飛び出た。逆の先端には小さい分銅が繋がっていて、アッという瞬間に腰蓑は分銅鎖鎌の形を成した。藍さんの黄土くんはその鎌の先端を武甲丸のななつある肩のひとつの関節に打ち込んだ。ハゲしく火花が散った。電気通ってたんかっ! 電動だったのか武甲丸っ! 藍さんの黄土くんは鎌を何度も同じ関節に打ち込んだ。腕のひとつが砕け弾けた。藍さんの黄土くんはさらにその隣の肩口にも鎌をぶち込んだ。火花が飛び、同じ様に腕はボディから外れた。分銅側の端をぐるぐる回して頭部に当てると頭部の一部が砕けた。そしてまた関節を攻める。炎の中で全身を焦がしながらも藍さんの黄土くんは矢継ぎ早に、そして丹念に武甲丸を解体して行った。つ、つよいぞ藍さん。
武甲丸がぐらりと揺らいだ。
「オ・ウ・ド」
とまた壊れたスピーカーから恨みがましく漏れる鈍い声が聞こえた。
武甲丸の残った腕の、指の先端が胸元にへばりついていた藍さんの黄土くんに向けて襲いかかった。指の先端からジャキーンと鋭い爪が飛び出した。山吹さんたちを傷つけた爪だ。だがそのうちの4つはすでに機能が働かなかった様だ。飛び出した爪は一本のみだった。その爪が藍さんの黄土くんの背中を刺した。爪は貫通して武甲丸の木製の胸板に突き刺さった。藍さんの黄土くんが武甲丸の体に串刺しとなった。大量の血が噴き出した。
武甲丸は、なおも燃えていた。
そして、さらにぐらりと揺らいだ。
ズトーンと巨体の膝が崩れた。
そして上半身が手前に倒れてきた。
倒れ来るその先の地面には俺がいた。そして隣には十季が倒れていた。俺と十季は武甲丸の下敷きになる形であった。
突然俺の肉を掴む手があった。気を失っていたと思っていた十季だった。たまげた。たまごと掴まれたからたまげた。が、そんなのもほんの一瞬のこと。十季はほぼ気絶をしたままの状態で俺を掴んで地を低く蹴った。 
間一髪。
俺は倒れくる武甲丸の隙間を抜けて下敷きをまぬがれた。
どしゃーんと、武甲丸が地面に崩れた。火の粉が飛んだ。
そしてっ!
藍さんっ!
藍さんの黄土くんが、串刺しになったまま武甲丸の下敷きとなった。
武甲丸の爪の餌食になった上に、燃える武甲丸の下敷きになった。
藍さんっ!
俺を、俺を助けるためにその身を投げ出した藍さん。
これが…二回目だよ…。
いや、実際には今は黄土くんだから二回めではないのだが、藍さんの姿であるわけだから俺にとっては二回めだった。
「藍さんっ! 藍さーんっ!」
俺は声を振り絞って叫んだ。
武甲丸はただ燃えていた。
ほぼ気絶状態なのに、無意識で俺を抱えて跳んだ十季が、俺の声に反応するようにゆらりと身を起こした。まるでゾンビのような死んだ虚ろな目で燃える武甲丸に照準を合わせたかと思うと十季は再び地を蹴って低く武甲丸に跳んだ。炎の中に消えたかと思うとすぐに身を翻して戻って来た十季の手の先には鎖分銅が絡まり、さらにその鎖分銅の先には鎖に絡まった全裸の藍さんの黄土くんがあった。十季は俺の前にその藍さんの黄土くんを乱暴に放り出すとまた崩れるように倒れた。
次の瞬間、燃えていた武甲丸がどかんと音を立てて爆発して砕け散った。
派手な爆発ではなく、周囲の住民にも安眠配慮したが如くの爆発であった。炎が同時に散ったが砕けた破片とともに闇に消滅した。
武甲丸は…闇に消えた…。コレが…忍びの刺客ロボの撤退なのか…跡形も残さず消滅するのか。
地面に落ちた焼け焦げも消火器の泡のようなものが立ち上りやがてその跡も消え去った。
静寂がもどった。
ここに残ったものは、ぼろぼろの十季と全裸の藍さんの黄土くんと、俺と…血まみれの柘榴さん、山吹さん、群青さん…ん? いや、この三人は既にそれなりの復活を遂げていた。
それぞれの手にはオロナイン軟膏があった。
やっぱりか…オロナイン。
音もなく三くノ一が俺と十季に駆け寄った。柘榴さんが膝に十季を抱き起こし肌をさっと撫でた。そして手早くオロナインを自分の手に取ると十季の傷だらけの身体に刷り込んだ。
一方、山吹さんと群青さんは俺を抱き起こした。手早くモロ出しのままになっていた俺の股間から、いや、脚の付け根である…あの武甲丸に思い切り引っぱられてもげる寸前までダメージを食らった俺の脚の付け根から、オロナインを塗ってくれた。素早かった。そして表情はゾンビが如く生きてるものの物ではなかった。無表情以上の怖さだった。くノ一たちも限界までダメージを受けているのだ。その上でまだ殿である俺を守ってくれているのであった。

17

俺も限界だった。
何しろ俺は一般人なんだ。例え命を狙われてる殿かも知れないけど、今まで波風立てずひっそり密やかに暮らしてきたどこにでもいるチンケな男子高校生なのだ。
刺客やらロボットやら、ましてや股裂などを経験したことなどなかったし、これからもないと思ってた。
これからもないとか、そんなことすら考えたことなかったよ。引っ張りはホントにきつかった。ホントに一時はもう裂けちゃっていいよとまで思った。そして楽になりたかったくらいだ。そこに妹の十季を…いや、実際には妹じゃないんだけど、ほぼ妹としてやって来た十季をがんがんと打ち付けられたのだ。
身も心もボロボロだ。
だが…。
次第に…。
なんだか心持ちが良くなってきた。
そ、それはそうだ…。
ゾンビのように死んだ表情ではあるが、もともとおっかない山吹さんではあるけど、18才の美女が、そして21才の美女が、ふたりで股間のケアを…ああ、そ、そんなことされたら、そんなことされたら…そ…あ…あれ? な、治った…?
あれ? 痛くない。
あ、これ、忍法肌さわり…お手当…。
ひとの手の温かみ、温もり…とは、これほどまでに傷を、痛みを癒すものなのか…。
ああ、なんだか天国に登って行くような気持ちだあ。
「う…う…」
と、近くで呻く声が聞こえた。
あっ…!
藍さん。
藍さんだ。
藍さんの黄土くんだ。
俺を、俺を救うために命をかけてくれた藍さんが…藍さんの黄土くんだけど、見た目が俺の大好きな藍さんが…傷だらけで…そして全裸で倒れている。
傷だらけで…。全裸で…。
藍さん。
藍さんにもお手当をしなくちゃっ…。
「あ…あの…藍さんにも…」
山吹さんと群青さんにそう言った途端に、無表情だったふたりの目がギッと音を立ててつり上がったのが分かった。そして同時にお手当してくれていた手が止まった。
そして逆にギッと爪が立った。
「あいっ!」
ほんわりと癒されていた足の付け根に強烈な痛みが走った。山吹さんと群青さんの爪が鋭く俺のそこに突き立てられていた。
さらに爪は容赦なく俺の付け根のところに食い込んで来たのだった。
「あ、いいいいいいいいいいいい〜〜〜〜…」
くノ一たちの手は、ある時は優しく暖かいぬくもりであるが、一瞬にして凶器にもなるのか…ということを今、激しく思い知らされているっ!
だが…。
だが、それにもめげずに俺は言葉を続けたのだ。
「藍さ…んに…、も、お、手…当て…を…」
くノ一たちは再び、爪を食い込ませて来た。
「あいいいいいいいい〜〜〜っ!」
相当に気に入らないのだな…藍さんのことを…いや、藍さんじゃないことは俺だってわかってるのだ。だが、ここになけなしの命を投げ出してまで、そして、自分の今までいた武甲衆まで裏切って助けてくれた藍さんを、藍さんの黄土くんを、見殺しにするわけにはいかないんだ。
「オロナイン、藍さんにもオロナインを…」
「こやつは藍ではございませぬ」
「武甲の犬」
「違う」
俺はつい、声を荒げてしまった。
「彼女は、いや、彼…は、あ、やっぱ、藍さん…は…俺の命の恩人だっ!」
ふたりのくノ一の食い込んでいた爪が緩んだ。
今の俺の声に反応したみたいだった。
「オロナインを…オロナインをくれ」
「武甲につけるオロナインはなどございません」
冷たく群青さんが言った。
「武甲は武甲でなんかあんじゃないですか?」
さらに冷たく山吹さんが言った。
くそっ。
肝心な時にちっとも殿の言うことを聞かないくノ一だ。
俺は、ごく自然に藍さんの黄土くんにすり寄った。そして、彼女を抱きしめた。
抱きしめた。
お、男だったけど…、藍さんの肌は柔らかかった…。男だったけど、男だったけどそうだった…。
俺には…俺にはこの人は、大好きな、大好きな、大好きな藍さんにしか思えないんだ。
藍さんの傷だらけの頬を、首筋を、俺は手で撫でた。
愛おしくてなで撫でた。
大丈夫だ。
藍さん、大丈夫だ。
俺が、今度は俺が君を守るから。
大丈夫だ。
俺は藍さんを撫でた。
傷が痛々しい。手で撫でると傷ついた肌を直に感じる。
撫でるんだ。撫でてこの傷を、俺が治すから。
俺は藍さんの薄い胸板や背中も撫でた。
治れ、治れ藍さん。忍法、肌さわりっ!
どがっ…と、俺は蹴り払われて転がった。
俺の体は藍さんから離されて地面に転がった。
え?
なんだ?
転がり果てたところから見ると、俺を蹴り転がしたのは…十季だった。
「十季」
十季も、ギリギリの状態だった。
不安定に立っていた。
髪の毛が前に垂れ下がっていて目の表情は見えない。憔悴しているようだった…が、藍さんの前に膝を落とした。
十季は、懐からオロナイン軟膏を取り出すと、言葉も発しないまま、それを藍さんの体に擦り込んで行った。
十季…。
十季よ…。
十季、ありがとう。
十季が…十季が、藍さんを無表情ではあったが、懸命に手当てをしていた。
他のくノ一のたちは、やはり無感情でそれを見守るようにしていた。
夜のしじまに、不思議なささやく声が聞こえた。
「暗殺ロボット武甲丸が向かった。心して向かい撃て」
ん?
なんだ?
と、思っていると…。
「おっせえよ、若葉」
と、呟く山吹さんの声が聞こえた。

第3話 終わり

| 大地丙太郎 | - | 13:39 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 08
街道の少々見晴らしのよい高台付近であります。
大所帯の柳生十兵衛一行が休んでおります。
茶屋のおばん(29)が持たせてくれました塩むすびなどを猪吉一家が皆に配って食べたりなどして、これはもう和やかハイキングの模様。
十兵衛もその塩むすびを食べております。そこに、やはり塩むすびをば持ってやって来たのは美影さん。
美『十兵衛さま、横に座っていいですかあ〜?』
十『ん? あ、いいよ』
美『やったっ?』
美影さん、嬉しそうに座り、ぱくりと塩むすびを齧ります。
美『ああ、楽しい』
十『楽しいのか?』
美『楽しいです。念願の十兵衛さまの一番弟子にもなったし…』
十『ははは…そんなんでか?』
と、十兵衛も塩むすびを喰らいます。美影、そんな十兵衛を見つめます。
美『十兵衛さま、なんで柳生を出たんですか?』
十『ん……』
美『十兵衛さまは、柳生家のご嫡男で、いずれは柳生をお継ぎになる方でしたのに…。それに、剣の腕だって、お父上の柳生但馬守様にも引けを取らないと言うもっぱらの評判でいらしたのに…』
十『なんでだろうなあ…』
まるで他人事のように言う十兵衛であります。
十『急にフトね…。それまで何も疑わず、何も考えず、オレはオヤジの言うことをひたすら聞いてきた…外様大名の取りつぶしの口実を工作したり、謀反(むほん)のでっち上げをしたり、オヤジにやれと命じられた事をただやっていた…』
美影、突然話し始めた十兵衛を黙って見ております。
十『だが、ある時な…、フト…、何の前ぶれもなくフトね…疑ってしまったんだ…見つめてしまったんだ、自分と言うものを…』
美『…』
十『そしたらな、まるで自分のやりたい事がそこになくてな…実はそこから先、剣もまるでダメになった…やる気なくなっちゃったの…剣ひとすじだったのにな…一回疑っちゃうと、こりゃダメなもんだよ…』
美影、わからないという顔で十兵衛を見ております。
十『わかんないよな、美影ちゃんにはさ…』
美『はい…よ、よくわかりませんが…あ、でも、なんとなく、わ…わかる気も…』
十『無理すんな…わからなくていいよ…オレのやって来た事は、オレにしかわからない…』
菜々、やや遠巻きに座りながら、十兵衛の話を聞いている。
隣でがさつに握り飯食いながら、そんな菜々にひとりでくだらない旅の武勇伝など語っているさくら。菜々は、もちろん、桜の話は耳に入ってはおりません。
猪吉一家は、ひざまづいて、さくらの話、聞いている。さすがはさくらの子分たち。せめてあんたら聞いて上げて。
時はゆったりと平和に流れているかの様なそんなひとときでありました。

十兵衛、なにとはなしに立ち上がります。
静かに美影の側を離れてゆく。美影ねえさんもいつの間にかさくらの旅の武勇伝に聞き入っていた。
大所帯の連中から離れ、川のほとりまでやってきました柳生十兵衛。
ぼんやりと水の流れを見つめております。
何かを考えているような、いや、考えていないような…。おそらく今、何気に美影に話した自分のコトを、なるほとと自分で噛み締めてでもいたのでしょう。
そこに、かつて十兵衛の刀でありました、三池典太光世を差した菜々がやって来ました。
気づく十兵衛がつと振り向きます。
菜『これ、ホントに重いですね。お侍さんて、いつもにこんなに重いもの持って歩いてるんですね』
十『そりゃまあ、菜々ちゃんには重いだろうよ』
菜『あの、これ…』
菜々、三池典太光世の柄に手をかけ、引っこ抜こうと最大限に手を伸ばす。が、三池典太光世の刀身の大半は鞘の中。菜々ちゃん、絶対的にリーチが足りない。いや、この刀身のリーチを持つ人間なんているのかしら?
菜『これ、どうやったら抜けるようになるんですか?』
十『そんなの抜かなくていいよ』
十兵衛、そう言って笑いますが、菜々は、えっ、えっと声を出してなんとか抜こうとしております。
十兵衛、横目で見ながら苦が笑いであります。
十『気をつけなよ、手ぇ切る……』
菜『イタ…』
言ってるそばから指を切る菜々ちゃん。
十『お、おい、ほら、だから言ったんだっ!』
十兵衛、慌てて菜々に近づきます。
菜『大丈夫です…』
言いながら菜々、十兵衛に指の傷を見せます。うん、確かに、ほんのちょっと切れただけではございます。菜々、傷の指をしゃぶって無邪気な顔で十兵衛ににっこり。
十兵衛、ちょっとそんなお茶目な菜々の顔に戸惑いながら、
十『もうやめとけ…』
と、穏やかに申します。
菜『もっと菜々に剣術を教えて下さい……
十『もう抜くな』
菜『強くなりたいんです』
十『抜かんでいい…』
菜『今度、あんな人たちに襲われたら、私、自分でえいっえいってやっつけたいっ!』
十兵衛、またもやそんな菜々に苦笑いたします。
その苦笑を、ゆっくりと空に向け、仰ぎ、十兵衛、風に吹かれるようにしております。
菜々は、そんな十兵衛を真剣に見つめている。
白い雲がゆっくりと流れている。
ふと、十兵衛、菜々を見たかと思うと、黙って菜々から三池典太光世を取り、自分の腰に差します。
スラッ
と、なんなく抜いて見せる十兵衛でありました。
菜『あ…す、すごい…』
心から感心する菜々であります。あんなに抜けなかった三池典太光世をこんなにすらりと抜くなんて…。
十『ちょっと腰を引くの…』
十兵衛、突如、三池典太光世を抜き身で、菜々に持たせます。
十『オレに向けて構えてみな』
菜『え…はい…』
菜々、正眼に構える。
が、重くて剣が下がってくる。
菜『重い…』
十『まあ、なんてか、てこの利用でね…』
菜『てこ…?』
ここで、美影、さくらがふたりを見つけやって参ります。
十兵衛、なにやらちょちょいと菜々にアドバイスなどしております。すると、おやおや、菜々ちゃんすいっと楽に持てるようになったではございませんか。
さ『ああコラ、ずるい!』
美『なに、ふたりでいんぐりもんぐりしてんですかあ〜っ!』
さ『いんぐりもんぐり?』
十兵衛、そんな美影、さくらを気にしない。
十『菜々ちゃん、オレを憎い敵だと思って打ち込んでみな』
菜『え?』
美・さ『え…』
思わず息を飲む、美影とさくら。
菜々、戸惑っております。
十『大丈夫だからさ…』
ですが、そうは言われても、今やっと刀を持ち上げられたばかりの菜々であります。十兵衛に切っ先を向けたまま、戸惑っている。
十兵衛、険しい顔で菜々をにらみます。
十『オレを本当に憎い敵だと思って』
菜『…』
十『オレを本当に斬るつもりで来いっ!』
菜『!…』
十『憎しみと…恨みを…ありったけ込めるんだ…』
菜『…』
十『必ずオレを斬れ…オレは憎い敵だっ』
菜『はあ…はあ…』
菜々、息が荒くなって来ました。
額に汗がにじんで来ます。
見ている美影、さくらもふたりの気迫と緊張に気圧され動けなくなっている。
十兵衛、険しい目で菜々を睨みます。
菜々、おびえる目で十兵衛を見る。

今ここに、菜々の脳裏を駆け巡る恐ろしい光景を申します。

柳生に襲われる菜々の村。
ことごとく斬られる村人。
母を斬る柳生…十兵衛…。
菜々は、ソレを物陰から目に焼き付けております。
菜『柳生……十兵衛……』

この光景はなんでありましょうか?
菜々の母を斬る柳生十兵衛の姿。
この申し上げはまた後のお話にて…。

菜々、柳生十兵衛への恨みが高まり、憑かれたように十兵衛に斬り込みます。
びしっ…
十兵衛、避けもせず、軽く指先で剣の棟を叩く。
ずざっ!
菜『あ…』
よろける菜々、剣から先に崩れ、地面に膝を突く。
十『あ…』
美・さ『あ…』
十『おお…っと』
十兵衛、慌てて菜々に駆け寄ります。
十『ごめんごめん大丈夫?菜々ちゃん…』
菜々、ぼんやりとした顔を上げ、かすれた声で答えます。
菜『…はい…』
遠巻きにいた美影、さくらも駆けつけます。
十『実は今のは正反対のアドバイスだ』
菜『え?』
十『人を斬ろうと思ったら、いっさいの感情を捨てる…』
菜・美・さ『…』
十『オレは…そうやってきた…感情で人を斬った事はない。感情は要らぬ…物のように斬る…ただそれだけだ…』
思わぬ十兵衛のシリアスな言葉に息を飲む3人娘であります。
美『それが…極意…ですか?』
十『…そんなんじゃないよ…』
十兵衛、立ち上がり、少し思案顔。
十『極意、ならある…。絶対に負けない極意がね…』
さ『あ、あるんじゃねえかよ柳生十兵衛え〜極意〜。どんなのどんなのそれ?』
十『戦わない事だ…』
美影、菜々、さくら目が点……
さ『はあ〜? なんだよそりゃっ! いんちき!』
猪吉子分B吉『いんちきは親分!』
猪『そうオレ、やかましいわっ!』
猪吉一家、いつの間にか近くで見ておりました。すかさずツッコむB吉と、猪吉のボケノリツッコミ。
菜々、ぼう然と…三池典太光世を握って座り込んでおりました。

つづく
| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 09:02 | comments(0) | - |
くのいちせぶん3話 01

くのいちせぶん
第3話「最近くノ一の様子がおかしいんだが」

 

1


今、俺の家には4人のくノ一がいた。
そして、そのうちのふたりは瀕死だった。
特に、妹・・・本当の妹ではないが、妹の十季は相当な深手の筈だった。いや、深手どころではない。背中から腹にかけて刀が貫通し、アレだけ大量の血が流れたのだ。死んでいても不思議ではないくらいだ。普通なら死んでいると思う。
あの時・・・。
地面に倒れ、動かないままの十季が声を発した。
「とのの・・・おっしゃるとおりにしてくださいませ・・・山吹さま・・・」
藍さん・・・実際には藍さんではなかったが…にとどめを刺そうとした山吹さんに向けた十季の言葉だった。
あの時、十季はすでに血が止まっていた。少なくとも俺にはそう思えた。なにしろあの時あの状態で生きていたコトに驚いた。
どうやら十季はうずくまりながら、秩父忍ビ三峰衆に伝わる秘薬で自ら止血したらしい。
今、十季の部屋の床に就いているくノ一がふたり。十季と群青さん。十季は自分のベッドに。群青さんは床に敷いた布団の上に横たわっていた。
このふたりにその忍者秘薬を塗っているのが柘榴さんと山吹さんだった。
群馬先生こと群青さんもかなりな深手ではあったようだけど、意識はあった。時々苦しそうな息を漏らしていた。
十季は・・・。
十季は、完全に気を失っているようだった。
息は?
息はしているのか?
まるで死んでしまったように、十季はうめき声さえあげなかった。
このふたりは、またしても、この俺のために、この俺の命を守るために、こんな姿になっているのだ。
俺は・・・。
俺はどうにもやるせなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
でも、なんで俺がこんな気持ちにならなくちゃいけないんだ。この運命の変化にまだ完全については行けてないぞ・・・うーん、いや、いろんな思いは巡るけど、今は十季。目の前の十季が無事でいてほしい。それだけだ。
十季に薬を塗っているのは、かつて、昨日の朝までは確かに母さん、大萬満子だった柘榴さんだった。
俺は柘榴さんの傍に進んだ。
「か・・・(かあさんと言おうとしてしまった。柘榴さんは19歳のぽちゃぽちゃの歯並び綺麗な可愛いコちゃんなのに・・・)柘榴・・・さん。お、俺にも手伝わせて」
柘榴さんが俺をみた。
「めっそうもございません」

柘榴さんがぴしゃりと言った。
「やらせて。十季は、俺にも手当てさせて」
やっぱり、俺は十季が妹にしか思えない。ずっと一緒に育った妹だ。
かあさんは・・・柘榴さんが忍法老け化粧で化けていたから、かあさんから柘榴さんに人が変わったと思える。
でも十季は忍者になっても、あの十季のままなんだ。
今、目の前に横たわっているのは、俺を殿と守るくノ一ではなくて、妹の十季なんだと、俺は思う。そうとしか思えなくなって来た。
俺は柘榴さんに手を差し出した。その薬、下さいという意味で。
柘榴さんは、少しためらっていたが、俺に薬を渡してくれた。
その薬を俺は指につけて、十季の鴇色の装束をめくり、傷に塗り込んだ。十季の体は少し冷たい気はしたけど、まだ確かにぬくもりがあった。生きていると確信した。だけど、体のあちこちが傷だらけだった。深いものから浅いものまで。十季はおそらく全身傷に覆われているのだろう。
はらはらと涙がこみ上げて来た。
少しづつ装束をたくし上げる。
そして脇腹。
藍さんの刀が貫通した脇腹。
見るのが少し怖かったけど、でも、俺の命を守るために十季が負った傷だ。
はっ・・・。
だいぶ傷が消えていた。
凄い。
この忍者の秘薬・・・。
俺は手にした秘薬の薬瓶を見た。
『オロナイン軟膏』
と、書かれていた。

 

2


「たいていの傷はオロナイン軟膏で治ります。それゆえ忍者は常備しているのです。あの武甲衆の刀を受けたあと、十季はすぐにオロナインを塗り傷を治療したのです」
と、柘榴さんが真顔で説明をしてくれた。
ホントかっ!
良い子と良いお医者さんは真似しないで・・・。

ともあれ。
俺は三峰衆に伝わる忍者秘薬、オロナイン軟膏を十季の体に塗っていた。
十季。
傷だらけのその顔のあちこちにも、そっと、そっと痛まないように塗っていた。
十季。
目を覚ましてくれよ。
十季・・・。
十季が、妹じゃなくて、俺の命を守る忍者だったなんて・・・。
まったくそんなコト、微塵も思わず昨日までやって来たのに。
十季。
十季の産まれた日のこと、俺は覚えているぜ。おぼろげだけど。
とうさんと病院に行って、ガラス越しに十季を見た。とうさんが嬉しそうな顔をして、ベッドに横たわっていたかあさんの手を取った。
ん?
あれ?
急に疑問が。
とうさんは、実は三峰衆の下働きの作造さんだったので、まあわかるが、そのかあさんは・・・忍法老け化粧を使った19才の柘榴さんだったわけで・・・。となると、その当時のかあさんは柘榴さん5才ってコトになるんだけど。いくらなんでも忍法老け化粧で5才の女の子がかあさんになれないよね。
え?それとも忍者ってそこまで出来ちゃうの?
と、柘榴さんを見ると・・・。
あれ?
いない。
あれ? 柘榴だけじゃなくて・・・山吹さんもいない。それどころか・・・今までそこに伏せていた、瀕死だったはずの群青さんもいない。
え?
俺は部屋を見渡した。
十季の部屋に、十季とふたりきり。
・・・。
どうやら、俺を十季とふたりだけにしてくれた・・・ようなんだけど・・・それにしても群青さんまで・・・。大丈夫なのか?
群青さんの寝ていた辺りにもオロナイン軟膏の瓶が置いてあった。え? 治ったの・・・?
忍者って・・・いろいろすごい。

俺はもう一度、十季を見た。
心なしか、十季の傷が少なくなっているような?
オロナイン効果ばつぐん・・・?
十季・・・。
俺は、妹、十季とのこれまでに思いを馳せた。
十季は昨日、こう言った。
「生まれた時から・・・正確に申せば、生まれる前から決まっておりました。わたくしの役目は、生まれたら太吾さまの妹として生きることにございました。少吾さまの暗殺指令が出たその時には、警護のくノ一であることを明かし、身命を賭してお守りせよとの命を受けておりました」
生まれてすぐに・・・?
俺の妹になって・・・?
俺の警護をしてた・・・?
十季は俺の妹じゃない・・・。
昨日浮かんだ「はてな?」がもう一度蘇ってきた。
十季は・・・俺を警備するくノ一。
十季が産まれて、それから俺は作造さんのとうさんと柘榴さんのかあさんと、十季と、4人家族で、ごくごく普通に生活をして来た。
十季とは仲は良かったけど普通に兄弟喧嘩もした。
テレビのチャンネル争いもしたし、おかずが多いとか少ないとかも。
十季は俺と同じ、地元の大萬幼稚園に通ったし、小学校も同じ大萬小学校、そして大萬中学・・・。
朝、学校を出て、帰れば十季はもう帰っている。一緒に晩御飯も食べていた。
産まれてから昨日まで、ずっと普通に一緒にいたはずなのに・・・十季はいつ忍者の訓練をしたのだろう。
あの剣さばき。
藍さん・・・のにせものの武甲衆の忍者と戦った時のあの身の裁き、戦いっぷり。
オリンピックの選手でもあれほどのスピードで動けるだろうかと思うほどだった。相当な訓練をしているはずだ。
でも、いつ?
一体いつ忍者の修行を?
いつ?
そう、問いかけるつもりで俺は十季の顔を見ていた。
十季は、今だに目を覚ます気配がなかった。
俺は十季の腕の傷にオロ・・・秘薬を塗っていた。
想像した。
十季が秩父の山奥で・・・俺は行ったコトはないけど、三峰山の山奥で、俺たちとの生活を普通に送りながら、手裏剣や刀の修行・・・野を走ったり、森を走ったり、大木を縦に駆け上がったり・・・そんな激しい修行をしながら、気配は微塵もアニキの俺には見せずに、ノー天気な妹として俺の横にいつもいた・・・のか。修行を終えて帰って来て、何食わぬ顔をして、俺とチャンネル争いをしていた・・・おかず取り合いしていた・・・のか。
俺を守るために・・・俺なんかのために・・・。
俺は、十季がはげしく愛おしくなっていた。
目を覚ませよ、十季。
覚ましてくれ。
「やだよおにいちゃん、やめてよねそういうの」
「わたし、おにいちゃんにはなんにも期待してないから」
「トイレ出たら電気は必ず消してよね」
これまで十季と過ごして来た時間が蘇る。普通に、ごく自然に憎まれ口をたたく生意気な妹。
そんな十季が生まれた時から俺の命を守るためにだけ生きてきた忍者だったなんて・・・。
ありえねえよ。
ありえない。
どう考えても、ありえない。

あ、そうだ。
十季。
お前・・・。

「私、応募したけど」

昨日の十季の、朝ご飯の時の言葉を思い出した。

「一次予選も通過して来月決勝でNHK行く」

そうだ、十季はEテレの声優スタジアムという番組に応募してたんじゃないか。
まさか十季が、声優に憧れてたなんてと、びっくりはしたけど・・・いや、忍者だった方がその何万倍もびっくりだけど・・・アレは、本当だったのかな?
十季の夢が声優だったこと。
少吾ってやつの暗殺命令が出なかったとしたら、十季はその決勝戦に行ったのかな?
いつ暗殺命令が出て、いつくノ一に戻らなくちゃいけない状態にあった十季に、本当にそんな夢があったのかな?
十季・・・来月の決勝戦は・・・どうするの?
十季は目を閉じたままだったけど、わずかに口が開いた。

「もう・・・」

十季がしゃべった。

「それは・・・」

ささやくように十季が言った。
「十季っ」
生きてた。
十季が生きてる。

「いいのです・・・」

いいのです・・・と、十季が言った。
目はつむったまま。
そう小さな声で言った。

唇もほとんど動かさないままだった。
それきり・・・。
また十季の口は閉ざされた。
眠っているようだった。
その表情には、なにも浮かんでいなかった。
夢を、あきらめてつらいのか、くやしいのか、残念なのか・・・それとも・・・最初からそんな夢など持っていなかったのか・・・それは、ただ、俺の妹を演じている上でのキャラ作りだったのか・・・。
俺には、まったくわからなかった。
いいのです・・・と、十季は言った。
そう言った。
いいのです・・・と、言った。
その言葉は、やっぱりなりたかったんじゃないの? 十季。声優に。
俺は心の中で、十季に話しかけた。
十季の表情は動かなかった。
俺の心は読んでるはずなのに。
十季の表情は、動かないままだった。

 

3

 

「これを」
わ、びっくりした。
いつの間にか隣に柘榴さんがいて、水の入ったコップと錠剤を3粒差し出したていた。
「飲ませて、休ませれば、程なく回復したしますでしょう」
この錠剤を十季に・・・。
十季は今、言葉を発しはしたが、いまだ目を開けていなかった。
また深い眠りの中に戻ったようだった。
柘榴さんが錠剤とコップを俺に差し出した。
「飲ませますか?」
「え」
戸惑う俺。
十季を見る。
寝てる。
え、どうやって?
飲ませるの?
やや、うろたえていると、柘榴さんがほんのりと口角をあげた。
そして、錠剤と水を自分の口に含む仕草をし、人差し指で俺の口を差した後に、移動させて十季の口を差した。
えっ、つ、つまり・・・、俺に口移しで飲ませろってっ!?
いやいやいやいやむりむりむりむり。十季は妹じゃないしっ。いや、妹だってだめだめだめだめ。
と、慌てて俺は手を振ってノーグッドを表明。か、顔が火照ってしまってるのがわかる。
柘榴さんは、ふふ・・・と、ふたたび口角をあげ、すいと錠剤を自分の口に含みさらに少量の水を含んだ。寝ている十季の上半身をすくい上げると素早く十季の口にその口をつけた。
俺はそのまましばらく柘榴さんと十季の口づけを見ることになった。
柘榴さんは錠剤を自分の口から十季の口に移しているのだった。
やがて十季の喉が小さく二回ほど動いた。錠剤を飲み込んだのだ。
柘榴さんは口移しで、眠っている十季に薬を飲ませたのだ。
飲ませたのだ・・・。
飲ませ・・・。
あれ?
もう錠剤は十季の喉を通ったと思うけど・・・柘榴さんは十季から離れなかった。
その口づけは・・・しばらく続いたのだった。
・・・だった・・・。
だ・・・
やがて、ゆっくりと柘榴さんの唇がは十季の唇から離れた。離れながら、柘榴さんは虚ろな目で、十季をまんじりと見下ろした。
「愛しい子・・・」
ん?
柘榴さんがなにか呟いた気がした・・・けど・・・。なに?
なんか、言ったよ・・・。
俺は、なんとなくハゲしく照れた。
め、目線がおよ、およ、泳いだ。
泳いで、落とした俺の目線の先に、その錠剤の入った薬瓶が置いてあった。
そのラベルには、確かに『パンシロン』と書かれていた。

 

4


十季を寝かせたまま、夕食になった。
食卓に、元かあさんの柘榴さんとふたりきりだった。
米のご飯と焼き魚、海苔、ひじき・・・まてよ、今朝のメニューと同じじゃね?
「あの、柘榴さん」

俺はちびちびと食べながら聞いた。
「はい?」
「山吹さんと群馬先生・・・群青さんは?」
柘榴さんはまた口角を上げ、わずかに目を後ろの柱に、そして天井にと移した。
いるのか。柱の影と天井裏にふたりが。
一緒に食べればいいのに・・・。なんかいろいろ決まりごとなんかがあるのかな、忍者には。それと、群青さんは怪我は大丈夫なのかな。
「太吾さま、湯殿のしたく、整ってございます」
「あ、は、はい・・・」
湯殿。
そうなんだよね、なんか緊張するんだよ。

0.75坪タイプの我が家の風呂・・・。


湯船に浸かる。
はあ〜とひと息・・・。
今日もまた衝撃の一日だった・・・。
と、静かにあれこれ回想しようとした時に、カタン、扉があいた。
「失礼いたします」
あ、はは、やっぱり来るんすね?
案の定、柘榴さんが素っ裸で入って来た。
俺はもう見ないよ。いちいち驚かないよ。これからはこれが日常になるんですね。りょーかいです。
ちゃぽん、と、柘榴さんは湯船に入って来た。
「よろしくお願いします」と、言おうかなと思いつつ、それも変だなと、黙ってた。
ちゃぽ。
湯船に柘榴さんとふたり。
柘榴さんは・・・可愛いらしい。
でも、まじまじ見るのも気が引けるので、俺はうつむいていた。
柘榴さんも特に何か話そうともしない。
黙ったまま、ふたりで湯船に浸かっていた。
この後は〜、どうしたらいいんだろうな俺・・・。
今日の出来事だって、なんだかここで楽しく話すコトでもない。
衝撃ではあったけど、なんだか触れたくなかった。
ふと、俺はこの先、どうなるのかな、どうするのかな…なんてことがよぎった時、がたーん、と、乱暴にまた風呂の扉が空いた。
ぎょっとして見ると、山吹さんが入って来た。
「風呂は裸であるべし」という三峰衆の掟通り、全裸で。
それでもしずしずとしなやかに入ってきた柘榴さんと違い、扉をけっこう乱暴にしめると、何も隠そうという意思もなさそうに堂々と振り返り、ずがずがと大胆にこっちへ近づいて来た。がばっと足を湯に突っ込み割り込むようにざばと湯船に入った。
や、山吹さんて、見た目はきりりと細いがなんかいろいろガサツだ。凶暴というか・・・今日の戦い方もそうだったけど、男のようだ。
山吹さんが湯船に沈むと顔はすぐ俺の前にあった。
ぎっという感じで山吹さんが俺を見た。睨むように見た。まるで俺のことが気に入らないかのような目で。
なんか俺はおとおどした。
「失礼いたします」
と、山吹さんが切れのいい高めの声で言い、頭をきりっと下げた。
入ってから?
そして山吹さんは鋭い目で湯殿の隅々をきりりと見渡した。
カタ・・・。
今度は控えめな音で、また風呂の扉があいた。
えっ? まさか・・・。
すたん。
まず手が見えた。き、傷だらけの手が床に突き、もう片方の手が扉をスルリとずらし、さらに開けた。
そして、全裸の群馬先生、じゃない、群青さんが這うようにして入って来た。
「し・・・つれい、いたし・・・ます・・・」
押し殺すようなしゃがれた群青さんの声。こ、怖いんですけどっ!
顔は項垂れたまま表情を見せないかたちで這って来る。
さ、貞子っ。怖いよっ!
そして、す、すいません、全裸のおかげで全身の生々しい傷が露わで・・・すいません、結構血だらけなんだけど・・・すいません、そして、すいません、ちゃぽんと湯船に手を、腕を入れて、すいません、あの、そのまま、あの、すいません、頭から入って来ないで下さい、先生っ! わっ、入っちゃったよっ! あ、足だけ外に出て、スケキヨっ! 今度はスケキヨっ! わ、ちょっと、湯船の中で体を反転させて、ざばーっと顔が出たーっ! わっ、ちょっと、長い髪の毛が傷だらけの顔にへばりついて、わっ、わわっ、お岩ーーーーーーーっ! そしてやっぱり・・・乳のボリュームは・・・ないんすね・・・すいませーーーーん!

湯船に俺とくノ一3人、計4人がぎっしりと浸かっていた。
変だ・・・。
やっぱり変だこの警護の形・・・。
俺のコレからは、これなのか・・・。
コレなのか?
などとまとまらないアタマであった。そして、そのまとまらない感、落ち着かない感の原因が、ふとわかった気がした。
十季。
十季がいない。
十季だけが、・・・そう、十季だけがここにいないのだ・・・。

いても、もう入らないけど・・・。

 

5


朝が来た。
新しい朝が。
たったふつかしか経っていないのに、もう最初の衝撃の出来事が何ヶ月も前のことのように思える。
(これは作者がこの何ヶ月もこの読み物を書かなかったからという個人的な感想もあるが・・・)
目が覚めてゆるりと起き上がると、そこに十季がいた。
正座をして控えめに顔を伏せ気味にしていた。
「十季っ」
思わず嬉しくなって声が出た。
十季がいた。十季が。
俺の声に十季は静かに頭を下げ、そして顔をあげた。
その顔には傷は見えなかった。
「もう・・・いいの?」
俺、声が弾んでる。だって嬉しい。
「はい」
十季が静かに控えめに答えた。
早いけど、早すぎるけど治るの。オロナインとパンシロンすごいっ!
でも良かったよ。ホントに。
「ありがとうございました。その・・・太吾さまが私の傷の手当てをなさってくださったと・・・聞きました」
「うん、うん、した」
そして、治ったんだ。俺が手当てをしたから、十季は治ったんだ。それが嬉しかった。
「もったいのうございます」
今度は深々と頭を下げた。
「いいよ、いいんだよ。したかったんだよ、俺が、お前の・・・」
お前の・・・と言ってみて少し照れた。何故か・・・照れた。
「お前の、手当てを・・・」
俺がしたかったんだ。
十季が顔を上げ、俺を見た。
俺を・・・。
あ、十季・・・。
忍者になってから・・・戻ってから? ・・・の十季は、ほとんど表情を出さなかった。出さない様にしている様だった。多分、それがくノ一のスタンダードなんだろうと思う。柘榴さんも他のみんなもそうだった。常に表情を殺していた。
でも・・・でも、今は、違うように、俺には思えた。
十季は、わずかだけど、俺に、はにかむように、照れたように微笑んでいた。ホントにわずかだけど、俺にはそう見えた。それは、多分、俺に対しての感謝の気持ちを見せてくれたんだと思う。
俺と十季はひととき、お互いに照れた感じで見合った。
その時。
ピンポーン。
と、チャイムが鳴った。
え?
俺も、そして十季もハッとした。
誰か訪ねて来た?
え?
誰が?

俺と十季が階下に降りて行くと柘榴さんと一緒になった。
俺たちは思わず顔を見合わせた。
皆、同じ思いだった。
一体、誰が家のチャイムを鳴らしたのだろうという思い。

玄関に来てインターフォンのモニターを見た。
誰も映っていなかった。
うえ。
ますます警戒しなくてはいけなかった。
十季が自然に俺の前に出た。柘榴さんがそっと玄関ドアの外の様子を伺った。外に、人の気配を感じた様だった。ふたりが音もなく短い忍者刀を抜いて逆手に構えた。ど、どっから出したの? 俺はそっちにもびっくりしながら、この警戒態勢にもびびった。いつまにか俺の両サイドにも群青さんと山吹さんが手裏剣を構えて俺をガードしてた。
ひいっ。
俺は体を固くした。
また、なんか始まるのか・・・!
柘榴さんが、わずかに目を配らせ、俺へのガード態勢を確認してから、ゆっくりとドアノブに手を掛けた。
ぐ・・・。
俺はツバを飲み込んだ。
新たな刺客・・・なのか・・・。
刺客がピンポン鳴らすか?
モニターに誰も映ってないのは、配達とか勧誘ではない・・・。
まさか・・・まさか・・・。
ピンポンダッシュっ!
・・・なんて、ピンポンダッシュをそんなもったいつけて言うコトない・・・。
柘榴さんがドアを一気に開け、同時に刀を逆手に持って構え、俺の前に後ろ飛びに来て警戒した。
ドアが開いた。
そこには・・・。
あっ!
そこにいたのは・・・。

藍さんっ!

 

6


くノ一たちが、さっと音もなく戦闘態勢の気をつめた。俺もそのくノ一たちの気を感じて、緊張した。

そこには藍さんがいた。

藍さんが・・・。

だが、この藍さんは、そうだ、藍さんではないのだ。敵なのだ。敵の刺客なのだ、だったのだ。昼間に俺を殺そうとして、くノ一たちと死闘を繰り広げた、敵なのだ。
もしかしたら敵・・・藍さんが、このままいきなり俺に襲い掛かって来るのかも知れない・・・俺もくノ一たちもそう思ったからこそ緊張が走ったのだ。

だが・・・だが、目の前の藍さんは、まるでそんな気配がなく・・・つまり、殺気の一つも感じない、可愛らしくうつむいたまま、無防備に立っていた。

可愛い・・・。
「貴様っ」
とこっちも可愛らしい柘榴さんが鬼の様な形相で言った。俺はドキッとしてしまった。まるで俺が怒られたかと思ってしまった。敵を可愛いなんて思ってしまったから、きっと・・・。しかし柘榴さんの言葉は藍さんに向けられていた。
「何をしに来た。二度と顔を見せるなと言うたっ」
厳しいその声に、ひれ伏したままの藍さんが・・・いや、藍さんに化けた秩父忍ビ武甲衆の名も知らぬ男忍者がさらに縮こまる様に恐縮した。
「お許し下さい。お許し下さいませ」
と、藍さんが・・・じゃなくて、藍さんのニセモノが、声は本当に藍さんのままで、か細く震えるように言った。
俺の前にいる十季が、右手に忍び刀を構えたまますっと下がり、俺の体に左の腕をわずかに密着させた。いざの時には俺を庇うつもりなのか、引っ張って逃げるつもりなのか、はたまた突き飛ばすつもりなのか、いずれにしても、十季の体から緊迫の気が伝わって来た。
「太吾さま」
と、ひれ伏したまま藍さんが言った。
やっぱり俺は藍さんがそこにいる気になってしまう。
まるで泣き出しそうな声で藍さんは続けた。
「私は、秩父忍ビ武甲衆・・・、黄土と申します」
黄土!
黄土?
おうど・・・。
そんな名前?
そんな汚い名前?
「この命を、・・・、どうか、太吾さまのために使わせて下さい」
え?
汚い名前の黄土・・・いや、やっぱり藍さん、藍さんが顔を上げた。
俺をまっすぐに見ていた。
泣きそうな顔をしていた。
泣きそうな顔で、ホントに、絶対ホントに本気で藍さんはこう言った。
「太吾さまのお側に、私を置いて下さい。私にも太吾さまの警護をさせて下さい」
藍さんがそう言ったんだ。
うん。
藍さんっ!
そうだよ。藍さんはやっぱり悪い人じゃないっ。
すっごいけなげです。
愛らしい。
可愛い。
いじらしい。
「きっと、きっとお役に立ちます。どうか、どうか私を太吾さまの警護役にお加え下さい。一度なくしたも同然の命を、太吾さまのお情けによって生きながらえました。ですが、このまま武甲衆に戻ることも出来ません。なれば、太吾さまに生かされた命を太吾さまのために使いたいっ」
藍さんが再び額を地面に押し付けるように頭を下げた。
「お願いでございます」
そのまっすぐで懸命な姿を見ていて、俺はふいに涙が溢れた。
藍さんが、そこまで言ってくれるなんて。
感動で体が震えた。
と、俺の体に触れていた十季がぴくりと動き、わずかに俺を振り返った。
「ふざけるなっ!」
どきっ!
びっくりしたっ!
そう叫んだのは、十季ではなく、あの、きりり凶暴美女の山吹さんだった。
山吹さんは俺の左後方で棒手裏剣を構えていたが、つかつかと歩み出て玄関を降り、ひれ伏していた藍さんの胸ぐらをむんずと乱暴に掴んで引きずり上げた。自分の目の前まで吊し上げると持っていた棒手裏剣の先を藍さんの喉に突き立てた。
「そんなことが信じられるかっ」
と吐き出すように言って藍さんを睨んだまま、これは仲間のくノ一たちに? 頭(かしら)の柘榴さんに? いや、殿の俺に?
「やはりこやつ殺しましょう」
と、言った。
や、山吹さん、やっぱり凶暴・・・。
俺はぶるった。ぶるったけど、反射的に言っていた。
「待ってっ」
その声にまた十季の指先が反応した。いや、今度は十季だけではなく、柘榴さん、群青さん、特に山吹さんも大きく反応して俺を睨むように見た。
に、睨んでる?
でも言う。俺は言う。
「ダメ、ダメだよ、それはダメ、やめて」
弱々しく言う・・・。びびってるよ俺・・・。しかも少し内股だよ・・・。
「殿、こやつの魂胆など見え透いております。昨日まで殿の命を狙っていた忍者が、このようにカンタンに寝返るなどと言うことはあり得ない。殺しましょう」
山吹さんは凶暴な流し目を俺にも投げつけながらそうきりりと言った。
ものすごく怖かった。
「お願い・・・やめて・・・そんな・・・ころ・・・ころ・・・す、なんて・・・」
声、かすれてました。俺はまるで俺が殺されるような気分の中で、やっとそれだけを山吹さんに言った。
俺のその言葉に、山吹さんはしばし俺を睨みつけている感じだったが、ちっと目線を外した。
怖いよ・・・。
そして、黙って藍さんの胸ぐらを掴み上げたまま、藍さんを睨んでいた。
が、やがて、後ろ姿を一瞬ぷるぷると震わせ、ばっと藍さんを放り出した。
「あ・・・」
藍さんが玄関先に転がり、か弱い声が漏れた。反射的に俺は、十季と柘榴さんの横をすり抜けて、山吹さんをもすり抜けて藍さんに駆け寄っていた。
「藍さん」
藍さんの前で俺は膝をついた。藍さんをすぐに抱いて起こして上げたかったが・・・、でも、それでもこの人は敵・・・なんだよな・・・という事実を思い出し、手を差し伸べる途中の格好であやふやに藍さんを見下ろしていた。
山吹さんが「ザッ」とわざとらしい音を立てて踵を戻し家の中に引っ込んだ。
怖いよ。
「当然です、私、刺客だったのだから・・・こんなことをお願い出来る立場ではないことなど、充分にわかっていたんです。でも・・・」
藍さんは、そう言って顔を上げて俺の目をまっすぐに見た。
目が潤んでいた。
「でも、私、殺されたっておかしくないのに、殿が、太吾さまが、お許し下さった・・・。それが、嬉しくて、嬉しくて・・・。そんな優しい言葉、生まれて初めて聞いたのだもの・・・」
そう言って、藍さんは、大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
あ、藍さん・・・。
か、可愛かった・・・。健気だった。
この忍者は、藍さんじゃないけど、俺にはまるで藍さんがそこにいるように思えた。
俺の目からも涙が溢れ出た。
この忍者は、過酷な使命と厳しい戒律の中で感情というものを押さえつけられて今日まで生きてきたのであろう。
それを、俺の、当たり前といったらホントに当たり前のひとの心というものに触れて、初めて人間らしい心を取り戻したのかもしれない。
忍者がこんなに感情を表して人の前で泣くなんて、きっとあり得ないことなんだ。そこまでこの人は気持ちを溶かしたのだ。
それを思うと、俺まで泣けてきたのだ。
俺は言わずにいられなかった。
背後にいる四人のくノ一に。
「あ、あの・・・、みんなが良かったら・・・彼女・・・彼・・・あ、藍さんを仲間に・・・」
俺は涙をこぼしながらくノ一たちを振り向いた。

あ。

ずーーーーーーーーーーん。
う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
な、なんか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そんな空気じゃなかった・・・・・・・・・・。
くノ一たちの目が・・・不気味に死んでいた。
言えない。これ以上。い、い、言えない。言える雰囲気じゃない。
山吹さんが、全くの無表情で近くの壁をドンと蹴った。
こ・・・。
十季が・・・黙ったまま・・・ぷいとそっぽを向いた。
こ・・・。
ざ、柘榴さんも、ぐ、群青さんも・・・まったく表情を消して俺から目線を外していた。
いや、け、消した以上の何かがある。むしろ表情がある。マイナスものすごい語ってる表情がある。
こ・・・怖っ。怖い〜。
藍さんが、ゆっくりと立ち上がった。
「当然のことです」
「あ・・・藍さん」
「黄土です」
あ・・・。そうだった・・・ね・・・。
「受け入れてもらえないのは当然のことです。当たり前の、ことです」
そう言って藍さん・・・黄土・・・いや、やっぱり藍さんは、顔を伏せたまま、後ずさった。
後ずさりながら・・・言った。
「でも・・・私・・・、こう申し出るしかなくて・・・。これは私の心からの申し入れでした・・・。太吾さま、黄土は・・・」
黄土さん・・・くん・・・が、俺をまっすぐ見た。いや、藍さんが。
「黄土は、心から、太吾さまをお慕い申し上げます。この空の下で、命ある限り、太吾さまを思って生きます」
え?
黄土・・・くんは・・・そう言ってくるりと背を向け走り去った。
本来は、たたたたたと足音が去っていくのだろうが、さすが忍者だけあって、足跡が立たなかった・・・。
あ、藍さんっ。
外は白い朝モヤが立ち込めていた。
やがて・・・、藍さんの黄土の藍さんの後ろ姿は、その大萬市大成町の路地の、しんとした朝モヤに溶けて、見えなくなってしまった。
俺は・・・また藍さんを失ったような感覚になった。
もう、コレで、ホントに最後なのだろうか・・・。
偽物だとしても・・・、藍さんの姿を見られることは・・・、もうないのだろうか。
しばしの間、藍さんの見えなくなった白いモヤを俺は見つめていた。
俺には、今の藍さんの言葉が、どうしても嘘であるような気がしなかった。
しかし・・・。
二度と現れない藍さんの姿、二度と戻らない藍さんの姿を、それでもいつまでも見ていたかったのだが・・・、俺はすべての力が抜けたようであった。
そこに立っているのもしんどいくらいに・・・。
やがて俺はくるりとカラダを戻した。
くノ一たちが・・・・・・。

い、いなかった。
ひとりも・・・。

ええーっ?

 

7

 

一日が無為に過ぎた。俺はなんにもせず、自分の家で経った一人で過ごした。いや、くノ一たちはいたようだ。昼飯は時間になると食卓に並んでいた。トーストとふりかけご飯とナポリタンとうどんが少量づつ、そしてひじきという献立であったが・・・。俺はそれを残さずに一人で食べた。どこからか、くノ一は俺を見ているのだろうか。

そしてそのまま夜になった。

風呂の時間になった。

無言でお湯が張られていた・・・。

えっと・・・。

俺は、とりあえず、いつものように服を脱ぎ捨て入る。湯船に浸かる。

えっと・・・。

しばらく、長い時間、静寂のまま、かたりとも音がしないまま、俺は湯船に浸かっていた。

えっと・・・。
今日は・・・誰も・・・お風呂にも来てくれない・・・のね・・・。
アウェイだ、殿、アウェイだ・・・。

0.75坪の湯船って・・・広いんだなあ〜・・・。

 

8

 

ちゃっぽーん・・・と、湯船で手を伸ばし、足を伸ばすと音が響いた。
俺は・・・、なおも、ひとりで風呂に入っている。
いや、普通の家庭の0.75坪の風呂なんだからひとりで入るのは当たり前なんだが・・・。
なんだが・・・。
ひとりなのだ・・・。
これは・・・。
通常なら当たり前のところ、このひとり風呂はかなり今の俺には打撃です。
怒ってる。
怒ってるんだよ、くノ一たち・・・。
多分。
間違いない。
え?
でもなんで怒るわけ?
俺、しかも殿じゃないの?
殿って、もっと、こう、恭しく、大事にされるんじゃないの?
現に俺がその殿とやらになった時から、あいつら気持ちの悪いほど俺を殿扱いして、こそばゆいほどあげ奉って、俺の為に命までかけてくれてたのに・・・。
なんで、こんなことでこんなアウェイ感を味合わなくちゃいけないの俺。
ふんだっ!
お、俺が、ち、小さくなるコトないよねっ!
ねっ!
ねっ・・・って・・・だ、誰に言ってんのかな、俺・・・。
誰に・・・。
誰?
ん?
誰かいるよアタマの中に。
十季?
あ・・・。
あれ。
なんで・・・?
なんで今、俺のアタマの中には十季の顔が浮かぶの?
十季の・・・あの目線をそらした瞬間の顔が・・・。
無表情な顔をすっとそらしたあの時の顔が。あの動きが。俺の脳裏でリピートするの? リピートするの? リピートするの?
いやあ〜〜〜〜っ!
と、十季しか出て来ない。
十季しか出て来ない。
なんで?
なんで?
と・・・十季が・・・十季が俺に冷たいコトだけが、今、俺の気になるコトなのか?
そうなのか?
い、いいんだよ粕太郎、いいんじゃないの?
もっと他のくノ一のことを気にしてもいいんじゃないの粕太郎?
せめて十季以外の・・・。
そそ、群青さんとか・・・(一応、今のところ一番当たりがゆるい群青さんを代表とさせていただきます)
ぎゃーっ!
と、思った瞬間、俺の脳裏から十季が消えて、柘榴、山吹、群青さんが一揃いで浮かんで来たよ。
同時に十季が消えた。
三人が一様に能面のような顔をしてる。そして目をそらせ、あ、山吹さんだけがはっきり俺を上から睨んでる。
ぎえー。
怖っ。
さらに睨みを効かせたまま山吹さんが、がんっと壁みたいなものを蹴った音が聞こえた。
怖いよっ!
がっ!
また蹴ったっ!
がっ!
また蹴ったっ!
がっがっがっ!
三連発来たっ!
ひぃ〜、やっぱり十季にしてっ!
十季がいい〜。
十季の方がなんぼか可愛いよお〜〜〜〜。
あの、ぷいとすねて目線を外した十季の顔が、可愛いよお〜〜〜っ。
え?
違う。
そういうコトじゃなくて・・・。
そういうコトじゃなくて俺は十季の顔が見たかったの。
いや、見たかったわけじゃなくて・・・。
あれ? あれ?
あれあれあれ?
ちゃぽーん。
がぼっ!
っと、お湯の中に俺が少し沈み込んだ。
口元までお湯に浸かって、はっとなった。
びっくりした。
は・・・。
は?
は・・・。
はっと、俺は目を覚ました様になった。
風呂に・・・やっぱり、風呂に、俺ひとりだった・・・。
ひとりで・・・。
ひとりで、なに想像に悶えてるんだよ俺・・・。
ぽーん。
ぽーん。
ぽーーーーーん・・・。
と、湯船の音の余韻が消えて・・・また、静かなひとり風呂になった。
くノ一たちのイメージは消えた。
俺は、口元まで湯船に沈み込んでいた。
現実にもどった。
ひとりの現実に・・・。
静かだ・・・。
風呂には窓がある。0.75坪タイプの風呂だけど、出窓が付いているために少し広く感じるようになってる風呂なのだ。窓はすりガラスだけど、月の灯りに外の小さな植木のシルエットが浮かび上がって・・・あれ? 浮かびあがっていなかった・・・。
いつも映る庭のソヨゴの木の影が見えない・・・ってか、窓の外に何か別のシルエットが覆っている?
そんないつもと違う窓外の景色を感じたその瞬間だった。
がしゃーん!

突如、窓のガラスを割って巨大な何かが襲って来た。
「げっ!」
その巨大なモノは湯船にいる俺の体に容赦なく襲いかかった。
「がっ!」
まともな声を出す間もなく、俺はその巨大なモノに掴まれ・・・そう、まるで掴まれ、体の自由を奪われ、窓外へと引き摺り出された。
がーーっ、な、なに?
なにが起こったのがーーわわっ?
わからねえ〜っ!
ただ、俺の体は、宙にいた。
外の宙にっ!

 

9

 

ぽつんとひとり風呂をしていた俺は、突如窓外から襲い来た何かに体を掴まれて外に引っ張り出された。
俺の体は、宙にいた。
外の宙にっ!
素っ裸のままっ!
ひえ〜!
俺はパニックになりつつも俺をつかんでいるでっかい物体を見た。
ん?

え?

ええ〜?

ロボット?
それは、確かにロボットであった。
木と、ブリキらしいもので作られた二足歩行の、マッチョな、頭部の小さい、眼光が電気で光っている・・・ロボットだっ!
さらによく見ると、左の肩に「武」の文字、右の肩に「甲」の文字が浮かんでた。
武甲衆!
し、刺客だっ!
そしてさらにさらによく見ると、うわっ手が無数にっ!ひいふうみいの、ななつあるっ!
(くのいちせぶん対応かっ!)
その手のウチのひとつはがっつりと俺の体を腕ごと握り占めているので。俺の体はアタマと腰から下が無防備になってる。
さらにロボのふたつの手がぐもーっと迫って来たかと思うと、俺の露わになっている両の足首をそれぞれむんずと掴んだかと思うと、一気に左右に引っ張りやがった。
「んぎゃーっ!」
つまり俺の股がぁーっ!
おれのまたがぁーっ!
さ、さ、さ、避ーーーーけーーーーるーーーーっ!
イデデデデデデデっ!

「く、くのいちーっ!助けろぉーーーーーーっ!」

と、叫ぶ粕太郎。くノ一たちは何をしている? 一向に出てくる気配がないよ。
絶対絶命の粕太郎の運命も多少気にもなるが、我々はここで少し寄り道をしなければならない。(何故?)

 

10 若葉編


粕太郎の股間が大ピンチになる少し前、粕太郎たちがいる大萬市から10里離れた萬粕城の天井裏で、三峰衆七くノ一のひとり若葉は、やや途方に暮れていた。
若葉の主な役割は戦闘よりも情報収集と通信係りであった。
萬粕城の天井裏に忍んで、一体どのくらいの月日を送って来たか。
5年・・・?
いや10年であろうか?
萬粕城に少吾が誕生したその瞬間に3才の若葉は少吾の監視の命を受けた。それから14年の間、若葉はこの天井裏に忍び、少吾とその周囲の動向を監視していた。
あ、だから・・・14年であった。天井裏生活14年。
若葉、17才。
だがこの14年、特になにも起こらなかった。
若葉は三峰衆七くノ一の中では最も忍びの術に長けていた。
それは元からのものではなく、3才で天井裏に忍び、それこそ最初は里で鍛錬した息の使いや身ごなしを駆使していたが、次第にそれが無意識に出来る様になって行った。
良く、忍びが物音を立ててしまった時に鼠の鳴き声を模倣して誤魔化すシーンがテレビなどでもある。
あれもまたひとつの正式な遁法の一つであって獣遁か虫遁の術となろう。
だがそれは400年も500年も前の室町人間であれば誤魔化せもしよう。
だが今は文明の発達した平成の世である。21世紀なのである。その様な子供騙しが通用するとは思えない。
では若葉はどうしたのか?
若葉はそんないかにもな音真似ではなく、空気の音を出す術を身につけていたのだ。
天井裏という狭い空間に長きに潜んでいて、なにも聞こえない静寂と思われる環境でも必ず音があることを体得した。人間は静寂を心理的に無音と判断するのだが、決して無音などあり得ないのだ。
若葉は、どう動いても、体から無音という環境音以下しか出ないいう技を身につけたのであった。それはごく自然にであった。
今や、若葉の身を包む忍び衣装は十季や柘榴たちの様な機能的なスタンダードな忍び装束ではなく、ほぼメイドコスチュームであった。退屈な天井裏生活の中で次第に趣味が生まれ、若葉はコスプレを愛好する様になった。
いろいろやりくりを重ね、若葉の衣装は元々ある忍者装束にプラスされたドレッシーなふわふわとしたメイドスタイルなっていた。さらにそこに伊達眼帯をつけている。伊達政宗の眼帯である。
忍者装束メイドスタイルアレンジに眼帯。この発想は映画『下妻物語』の中のゴスロリな深田恭子と樹木希林の婆さんの眼帯を観た若葉の独自のミックスであった。若葉のお気に入りであった。
若葉は天井裏でテレビもBlu-rayも楽しんでいた。音は一切出さなかったが全て理解出来た。実写は唇も読める。アニメは三枚の開き口中口閉じ口しかないにもかかわらず前後の関連から大まかなストーリー、セリフネタまで読み取り、時には無音で聞いて涙することさえあった。
話は戻るが、その様なふわふわとした忍び衣装であっても一切忍んでいて音を出さないという技を身につけていた若葉であった。

さて・・・。

3年ほど前から寝たきりになっていた19代当主・萬粕机衛門(つくえもん・108)が少し前からいよいよ大往生を迎える雰囲気になって来た。
すると、それまで平凡で素直でおとなしいが明るかった少吾少年・・・んー、若葉的にはそんな呼び方はしたくないのだが、取り敢えず、少吾少年の気がそぞろとして来たのを感じたのであった。
それまでは監視と言っても多少ゆるめにしていた若葉であったが、この頃から監視を強化した。
ある日、少吾は武甲衆頭目・瀬目人(せめと)を呼んだ。
「太吾兄を・・・消せ」
ついに暗殺指令が少吾の口から出た。
若葉はすぐに報せの伝書鳩デバトンを飛ばした。
だが、同時に武甲衆からも伝令の黒鳩クロバトンが飛んだ。前を飛ぶデバトンを見つけたクロバトンは機転を利かせ、デバトンを襲ってしまったのだ。
デバトンのいち早い伝書が届かなかったために、柘榴や十季が動くのが遅くなった。そのため、殿である太吾は襲われ、それを守るために藍は爆死した。
そのことは萬粕城の天井裏にいる若葉には直には伝わらなかったが、デバトンが戻らないことでそれを察していたし、武甲衆の報告を天井裏で聞いて大萬市の状況も手の内にあった。
デバトンの存在を知った武甲衆は当然、萬粕城に忍ぶ曲者を仕留めようと躍起になって探したが、若葉の長けた遁走術によりまったく見つからなかった。実は若葉は何もしないでその場にうずくまっていただけなのだ。息も何もかも殺して。探し出そうとする相手の意気込みが大きいほどこの術は有効であった。
だが、それからの若葉は役立たずだった。
まずは死んだ藍の代わりに男忍者を送り込む作戦を聞いた時、すぐに伝えなければと思いつつ、伝える手段がなかった。
「あいつらケータイくらい持ってくんねえかな」
若葉は思った。若葉は割と最新のスマホを持っているのだが、他のくノ一が持っていなければ意味がない。
三峰衆はその辺の経費を出してくれない割と零細な忍び集団なのである。歯噛みをする若葉であった。
そして、その藍を装った武甲衆が七くノ一の手に掛かり失敗したと知った。
武甲衆はさらに次の手として、忍び暗殺型ロボット、武甲丸を送り込む作戦を立て、実行した。
若葉はまたすぐに知らせたかったが交代要員もいない監視係である。情報を知るだけで伝えられないなど、なんの忍びであろうか。
若葉は無音の地団駄を踏んだ。
と、その時、ふと技を思いついたのだ。
空気による伝達。
空伝の術だ。
若葉は無音でしゃべった。
心の中で言うのと違う。確かに言葉は発するのだ。だがそれが無音レベルなのだ。
「暗殺ロボット、武甲丸が向かった。心して向かい撃て」
この言葉が空気を伝わって10里先の大萬市にいる柘榴や十季の耳に届くはずである。

 

 

11

 

俺の股間が大ピンチに話は戻る。

「く、くのいちーっ!助けろぉーーーーーーっ!」

と、叫んだ俺の声は声になっていなかった。この武甲衆のロボットの手・・・らしきもの・・・アニメ的にいうと触手が俺の口元まで塞いでいたからだ。

実際の音は「もがんご、もこごもも〜」だけだった。

が、くノ一たちは出てきた。

さすがだっ! ・・・と、言いたいところだが、あれだけの物音がすれば当然俺の身になんか起きたっつコトくらいわかるだろう。くノ一じゃなくても。

まあいい。出てきた。

よし、くノ一たちよっ! この怪物をとっとと退治して俺を助けろっ!

助けろーっ

た、たすけ・・・って、おい・・・はあ〜?

出てきたくノ一たちを見て俺は、はあ〜?

十季はパジャマ姿。

柘榴さんはパック顔。

群青さんは歯ブラシくわえ、山吹さんはカーラー頭。

ををーいっ!

のん気かっ!

お前ら俺を守る気ゼロだろーっ!

なに普通に生活してんだっ!

それじゃ一般人だろうがーっ!

などと情けない気持ちになったその俺と来たら・・・ぎゃー、そうだ、そうなのだ。両の足を180度におっぴろげられていたのだーっ。

・・・ああ〜っ! 股間がっ! マイ股間があ〜! 丸出しだーっ! 俺、恥ずかしーっ! 情けないのは俺だったーっ!

と、くノ一たちは一様にその俺の股間に気がついたようであった。

ぎょっと俺のおっぴろがった股間に目をやり、口からそれぞれいろんなものを吹き出し、一斉にくるんと背中を向けた。

こらーっ!

なにはにかんでんだーっ!

毎夜素っ裸で風呂に入って来たヤツらがなにを今更照れてるんだぁーっ!

すると、

「ゆ、湯殿はにごり湯のバスクリンが入っておりますゆえ大丈夫なのです」

と、十季が俺の心を読んで答えた。

バスクリンの問題なのかーっ?

びきっ。

ぎょがえごおーーーーっ!

ロボットがさらに俺の両の足を引っ張ったーーーーーっ!

裂けるーっ!

裂け死ぬーっ!

くノ一ぃーーーーっ!

その苦しみの限界で俺はもが叫んだ。

「もごょーーーーーっ」

押さえられた口ながら最大音量の声が漏れた。

くノ一たちが、はっと我に帰って俺の方を向き直った。

早く、早くぅーーーーーっ!

くノ一たちは顔を付き合わせた。

「しまったっ」

と、柘榴さん。

「油断をしたっ」

と、山吹さん。

「殿がのっぴきならぬ事態になってしまった」

と、群青さん。

「殿のあまりの馬鹿行動に呆れているうちに、肝心の警護が手薄になっていたのだ」

と、山吹さん。

「いかに殿の振る舞いが馬鹿であろうとも、殿は殿」

と、群青さん。

「いかさま、我々はそれでも守らねばならぬ」

と、柘榴さん。

「反省じゃ」

と、山吹さん。

「うむ、反省じゃ」

と、群青さん。

反省なんかいいから早く助けろーっ!

あと馬鹿とか言ってたか今?

「助けねばっ」

と、柘榴さん。

「よし、助けよう」

と、群青さん。

「いやしかし待て、アレをなんとする」

と、山吹さん。

「アレか」

と、柘榴さん。

「殿のちんちんを見ながらなど助けようがない」

と、群青さん。

「アレは見られぬ」

と、山吹さん。

「見て楽しいものではない」

と、群青さん。

「特に見たくないモノナンバーワンである」

と、山吹さん。

「よし、わかった。ならば見ないで戦おう」

と、柘榴さん。

「うむ」

と、群青さん。

「承知っ!」

と、四人が言い・・・。

ざっ。

くノ一たちが一斉に一般人服を脱ぎ捨てた。

下から、鴇、柘榴、山吹、群青色の戦闘服が現れた。

うん、いかすぞっ! いろいろ引っかからないでもなかったが俺のくノ一たちよっ! 今こそ敵を粉砕しろっ!

ささっ!

くノ一たちはさらに一斉にそれぞれのイメージカラー鴇、柘榴、山吹、群青の色の細長い布を取り出し、真一文字に目に被せ、頭の後ろで結んだ。

そして、顔をしゃきーんと上げた。

しゃきーんじゃないよ、なにそれ、め、め、目隠し?

頭まで忍び戦闘装束で隠し、口元まで覆っているメンバーもいるという中で、さらに目隠し。もうほとんどの顔が隠れてるだろ。

「コレで殿のちんちんを見なくて済むぞ」

と、群青さん。

「うむ、妙案だ」

と、山吹さん。

妙案なのかっ!

そりゃ俺も見られまくるより見られない方がいいけど。

くノ一たちは目隠しをしてでも戦えるのかっ! そんな訓練もされているのか。そうかもしれない。わかった。来い。俺の股間を見ないで戦うのだくノ一っ!

真っ先に十季が忍者刀をすらりと抜き放ったかと思うと、突きの形で刺客ロボットに突進した。あ、いや違うっ! 十季が突進して来たのは俺の方だ。

十季、大丈夫か、見えているか?

だが、十季は迷いのない勢いでこちらに突進してくる。お、十季っ!

さらに正確にいうなら、お前が向かってるのは俺は俺でも俺の股間だぞーっ!

忍者刀の切っ先がまっしぐらに俺の股間めがけている。

おわー、このままでは大変なことになるっ! 十季の刀が俺の股間のものを見事に貫通させることになるぞっ! 今、この一番大事な局面に限って、俺の心の声がまったく聞こえてない風の十季だった。

「どあーっ!」

ただでさえ足首を掴まれておっぴろげされていて身動きも取れない中で、十季のこの容赦のない猛烈な攻撃から俺の股を守るため、俺は渾身の気合いで「のごっ」と股間のものをわずかに持ち上がらせた。わお、やればできるものであるっ! さらにっ! 俺は尻の穴に踏ん張りを利かせ5ミリほど上にケツを持ち上げた。

のわっ!

やればできるものである!

びゅっ!

十季の刀がすかさず食い込んで来た。

わずかにかわせた!

わずかにかわしたのだ俺。

いや、少し擦った。

ちっと、少し擦れた感覚が股間にあった。

刀は俺の股下ほぼ隙間なく水平垂直に突き進んだ。すれすれだっ! すれすれだが俺はいい仕事をしている、と、思った瞬間、硬い鍔が股間の物に激しくえぐられたっ!

がーーーーっ!

わずか5ミリでは鍔はかわせなかった。

俺のロボにより塞がれていた口はがロボの手をもはみ出して最大級に開かれた。だが痛すぎて声は出ねえーっ!

刀はそのまま突き進んだ。突き進んだ先には夜の闇があるのみだ。俺の股下を通過するのは、そして柄とそれに添えられた十季の手、腕、そして腕が肩、その肩まで入ったところで、次には十季の顔面が、最悪にも俺の股間にぶち当たった。

・・・ぶち当たって・・・ストップした・・・。

十季の動きが止まり、目隠しの下の口元が(え?)と、うろたえ漏れるかのようにわずかに開いていた。

「十季、そこ・・・ダメ・・・」 

痛み絶頂を越えてロボの口からはみ出ていた俺の口から、漸く言葉が漏れた。

ほんのわずか、しばしの間があって、十季は何事もなかったかのように身を翻し、宙で体を回転させると、元いた我が家の玄関先に俺に背を向ける形で着地すると、跪き、うずくまって動かなくなった。

え?

なんか気分悪そう。

ちょっと傷つく。

十季が俺に突進して来たそのわずか後には間をあけずして柘榴さん、山吹さん、群青さんも地を蹴ってロボットに突進していた。

だが、柘榴さんの忍者刀はお隣の沼山さん家のソヨゴの枝と葉っぱをそぎ落としているのみだし、山吹さんのキックはお隣の沼山さんの家の軒下の雨どいを破壊しているだけだったし、群青さんの手裏剣はお隣の沼山さんの家の洗濯物にことごとく命中して穴だらけにしてるだけだったし、ことごとくてんで方向違いの敵を粉砕するか、破壊するか、無駄な攻撃であった。沼山さんごめんなさい〜。

肝心のロボにはまるで一ミリの攻撃も仕掛けられていない。元気いっぱいに俺の股間を開きまくったままであった。

てんで様になってないくノ一たち、役に立たないくノ一たちに、俺は股間を広げられたまま、その痛みに加えて情けなくなり涙が溢れた。

くのいちぃ〜・・・。

 

12

 

攻撃の手応えをまったく感じなかったくノ一たちが、一旦退いて玄関先に着地した。一様に虚しい体力を使った彼女らは、荒く息を吐いた。

「まったく敵の位置がわからぬ、はあはあ」

と、柘榴さん。

「手強い、はあはあ」

と、山吹さん。

「万策尽きたか、はあはあ」

と、群青さん。

いや、はあはあってね、目隠ししてるからでしょう。言ってみればまったくとんちんかんな策だからね、それ。しかも、目が隠れててもかなりな技があると期待してたんだけど俺。 

その時。

うずくまっていた十季がすっくと立ち上がった。そして目に巻いた布をすぱっと解いて、くるりと体を柘榴さん、山吹さん、群青さんに向けて言った。

「見ましょう」

「見る?」

柘榴さんが返した。十季の言葉に戸惑うくノ一たちだった。

だが十季がきっぱりと言い切った。

「見ましょう。太吾さまのちんちんなど、見て照れるほどのものでもありません」

あのね。

「確かにそうだ」

と、柘榴さん。

「照れるほどのモノでもあるまい」

と、山吹さん。

「我らどうかしていた」

と、群青さん。

「見よう、あんなもの」

と、再び山吹さん。

聞こえてますけど。全部聞こえてますけど。

くノ一たちは、一斉に各色の布を解き、刺客ロボを見上げた。

と、同時に俺の股間をも見上げた。

「きゃっ」

四人のくノ一たちがまた一斉に黄色い声を出して手で目を覆い顔をそらした。

 ををーいっ!

お前らそんな殊勝な感じだった?

その時、刺客ロボ武甲丸(という名であることは後から知るのだが・・・)の7本の腕のウチ、俺を痛めつけている3本でない腕が高速で伸びたかと思うと十季を掴み上げた。あの十季が。あの武甲衆の藍さんと鋭い戦いを繰り広げた十季とは思えないほどの油断の十季だった。

「くぅ」

十季の油断を悔やむ息が漏れた。

十季は一度宙高らかに振り上げられる。刺客ロボはそしてその振り上げた腕を一気に俺に向けて振り下ろしてきた。

「んがっ」

塞がれた口で俺はたまげ声を漏らした。

腕は十季を俺に激突させた。

「ぐえっ」「く」

俺と十季が同時に悲鳴をあげた。

離してはまた激突させた。

「ぬがっ」「う」

やめろっ!

痛えええええーっ!

刺客ロボの野郎は、俺の大事な妹で・・・実際には妹じゃないけど、表面上妹で、俺を何度もぶちつけて来た。ふいに俺の体を掴んでいた腕が離れた。となると俺の体は95%フリーになったのだが、最後の5%の両足首を掴んだ腕はそのままである。

当然俺の体は逆さまに回転した。ロボは更にぐあっと十季を上に放り投げたかと思うと落下して来た十季の頭を摘んだ。

そして、まるでボロ雑巾の様に十季の体をバッテンに振り回しながら俺の体に鞭打つ様に当てた。いててててててっつーーっ!

さらには逆さになった俺の股間を公衆浴場でおっさんが手ぬぐいパンパンやるみたいにそれを十季でやって来た。

俺はもう悲鳴すら出ない。気絶寸前にダメージを受けていた。

「十季っ」

下から母さん・・・じゃない、柘榴さんが叫んだ。十季はあまりにも今は無力であった。何故だっ!

十季だけではない、くノ一たちが一様に冴えない。何故だっ!

あ・・・。もしかして、これか・・・。俺のこの状態・・・特に股露わが、くノ一たちの戦意を萎えさせているのかっ! 弱点かっ! そんなウブなことが弱点なのかっ! 確かに残りのくノ一たちも玄関先でこの状況を見上げているのみでやけに内股、および腰でひるみっぱなしだ。

そんな中、振り縛るように睨みつけて果敢にロボに向かってくるくノ一がいた。山吹さんだ。山吹さんは飛躍しながら忍者刀を抜いた。そしてロボの体を切り刻みはじめた。

さすがだっ!

さすがの山吹さんだっ!

ただいつも怖いわけではないぞ山吹さんっ!

いいぞっ!

一気にロボを倒しちゃって下さいっ!

ところが、ロボは全ブリキ製かと思いきや要所要所はどうやら鋼鉄であるらしい。

ぱきーんと、山吹さんの刀を折ってしまったのだ。

「ちっ!」

山吹さんが吐き出すように言った。その一瞬の隙をついて、素早く伸びてきた刺客ロボ武甲丸の手が山吹さんを襲い来て掴んだ。山吹さんの体は武甲丸の手によって自由を奪われた。

「ぬぐっ!」

山吹さんが苦しそうな息を漏らした。

ジャキーン。

武甲丸の手は、山吹さんを掴んだまま指の先端から鋼鉄の鋭い爪を伸ばしたのだった。

「ぐあっ!」

山吹さんは5本の爪により串刺しとなった。

「!」

俺は声を出せないままでいた。

冷静に実況をしているように見えるが、実際には武甲丸の別の手で振り回されているときによってしこたま一番俺のつらい部分を攻撃されたままなのだ。この実況は俺のようで俺でないものがしているのだ。いや、そんなことより山吹さんの運命はっ!

武甲丸が、爪を山吹さんから引き抜きながら手を広げた。血だらけの山吹がどさりと地面に落ちた。

山吹さんっ!

だが、落ちたのは8トラックカラオケマシーンの機械であった。

か、変わり身の術っ!

・・・にしてもスナックのママっぽくそんなレトロな8トラックのカラオケマシーンでなくとも・・・。俺も若いのによく知っている。

でも良かった。

や、山吹さんは?

見ると武甲丸の上空から山吹さんが落下しながら手裏剣を放った。

しかし、武甲丸のボディに手裏剣はことごとく跳ね返された。そしてさらにまた別の角度から武甲丸の手が山吹さんを襲った。手の指から再びジャキーンと鋼鉄の爪が伸びた。再び串刺しにされる山吹さん。武甲丸の手が開く。血だらけの山吹がどさりと地面に落ちた。だが、今度はレーザーディスクカラオケビデオマシーンであった。

いや、もう今時使えなくなったとはいえ、そう二度ともカラオケマシーンで変わり身って。

 

(つづく)

13

 

刀を折られ、手裏剣を弾き返された山吹さんに残っている武器はあるのか?

と、山吹さんは懐から透明のガラス瓶を取り出し武甲丸目掛けて投げた。

キーン。

だがその武器は虚しく武甲丸の頭部に当たって跳ね返った。それはサントリーウイスキー角瓶だった。

スナックで出た廃棄物かよっ!

「ちっ」とエアツバをはいた山吹さんを三たび武甲丸の手が襲った。

「ぬぐっ」

山吹さんがうめいた。ジャキーンとツメが伸びて山吹さんの体を貫通させた。

激しい血が噴き出した。

武甲丸の手が開いた。

どさりと山吹さんが地面に落ちる。

今度は・・・山吹さんはどんなカラオケマシーンに変わり身?

だが、地面に流れ出す山吹さんの血。うわーやられてるーっ! 山吹さん、オロナイン、オロナインっ! もうカラオケマシーンないのかーっ!

その地面に倒れた山吹さんを見てはっと目を覚ました様に柘榴さんが地上から手裏剣を武甲丸に向けて連投した。

山吹さんの手裏剣を跳ね返した手裏剣だったが、今度は全てが武甲丸のボディに突き刺さった。

だが武甲丸はダメージもなくなおも堂々と立ち覆ったままだ。でも柘榴さんの手裏剣攻勢は尽きることなかった。八方手裏剣、十方手裏剣、棒手裏剣、ナイフ、フォーク、スプーン、菜箸、割り箸、鍋、やかん、フライパン・・・ちょっとおー、手裏剣尽きてるよー。それ台所用品だよー母さんっ! 思わず母さんと言ってしまったーっ! 

だが、最後のフライパンが武甲丸の片耳を擦り飛んだ。武甲丸の耳から小さなボルトとバネの様なものがボヨンと弾けた。壊れた。無敵に思えた武甲丸がわずかに壊れたっ!  柘榴さんがその成果ににっとドヤ笑みを浮かべた。

が、その隙を突いて武甲丸がわずかに胸を反らせたかと思うと武甲丸の体に刺さっていた手裏剣の数々が一斉に弾き飛び、そのまま柘榴さんを襲った。柘榴さんは自らの手裏剣を全てを自分で受ける羽目になったのだ。

柘榴さんが、その衣装と同じ色の鮮血をほとばしらせその場に崩れ落ちた。

ざ、柘榴さんっ! オロナイン、オロナインっ!

その足元に崩れ落ちた柘榴さんを見てはっと我に返った群青さんがキリッと武甲丸を見上げた。そして自らの胸を鷲掴みにしたかと思うと引きちぎり武甲丸に投げつけた。

出たっ! 群青さんの爆乳爆弾っ! これで武甲丸を粉砕・・・いや、群青さん、今投げたのただのブラっす。

群青色にピンクの細かな花柄を散りばめたほんのり可愛いブラっす。

「くっ、しまった。寝る前だったので爆弾は外していたっ」

そう言えばすっかりさっきは寝る前の歯磨きをしてましたねっ!

武甲丸の伸びた手が飛んできたブラをも丸ごと引き込んで群青さんの頭部を掴み包んだ。そして宙に持ち上げたかと思うと地面に叩きつけ叩きつけた。

群青さんは柘榴さんの脇にぐったりと動かなくなった。

群青さーーーーんっ! オロナイン、オロナイーーーーーーーンっ!

 

14

 

くノ一が全滅した。

山吹さんは武甲丸のツメの餌食となり、柘榴さんは手裏剣返しをされ、ふたりとも血を流して地面に倒れている。群青さんも激しく地面に叩きつけられふたりの横に転がっている。そして、十季は、俺の股の間にぐったりと気を失っていた。俺は相変わらず素っ裸で、両の足首を武甲丸のふたつの手で真一文字に開かされていた。体はずっと逆さまに吊るされていた。十季はそんな俺の股の間にぐったりしていたのだった。俺もだった。俺も十季の体で散々鞭打たれ、朦朧としていた。

くノ一が全滅した。

絶望的であった。

助かる見込みは、もうなかった。

ぐいっと、俺の足首がまたもや左右に強く引っ張られた。

うぎやーーーーっ!

もう俺はむしろこの痛みから解放されたかった。もういいから俺の股を割いてしまってくれっ! そして俺はそのまま安らかにあの世に行きたい。楽になりたい。もうなんにも望まない。

あぎあがうぐあーっ!

股がはち切れはじめていた。

「たいご…さま…もうしわけ…ございませぬ…」

俺の股間でほとんど気を失っているはずの十季の声がかすかに伝わって来た。十季が…。あきらめた…。ああ…すべての望みは絶たれた。

 

その時であったっ!

 

ジャキーン

ジャキーン

と、高く鋭い金属音がした。

朦朧としていた俺には即座に何が起こったのかわからなかったが、次の瞬間、俺は股間の引きちぎれる痛みから解放されたのだった。

武甲丸の、俺を掴んでいた二本の腕…触手が、本体の肩口から切断されて空(くう)に舞っていた。

そして…。

その武甲丸の前の宙には、大刀を振り下ろした態勢の…。

「あ…藍さんっ!」

藍さんが…藍さんがいたっ!

藍さんがっ!

あ、藍さんではなく、黄土…さん…くん…なんだけど…でも、藍の装束に身を固め、俺をあの大萬公園で守り死闘を繰り広げてくれた、あの藍さん…あの藍さんにしか、…俺は見えない。

藍さんがいたっ!

藍さんが助けに来てくれたっ!

股裂から解放され、ゆるりと落下をしながら、俺はその藍さんの勇ましい姿を惚れ惚れと見上げていた。股間に引っかかっていた十季が落下しながら俺の体からゆっくりと離れた。

上空の、藍さんが持っていた大刀が、パキーンという音を立てて割れた。

普段の短くまっすぐな忍者刀ではなく、藍さんの身長をも越えるほどの大きな刀であった。藍さんはその大刀で武甲丸の腕を肩から切り裂いたのだ。そしてふたつの腕を刻んだ大刀はポッキリと折れてしまった。

折れた大刀の残った刃を一瞬見た藍さんはそれを投げ捨てた。宙で身を翻すと武甲丸の胸板にキックをした。武甲丸を倒そうという目的ではなく、そこで弾みをつけて、藍さんは落下する俺たちに弾丸のように向かって落ちてきた。地面すれすれに、叩きつけられる寸前に、藍さんは両の腕に俺と十季を抱えて自分の足ですたんと静かに着地した。

十季を地面に速やかに寝かせ、俺をもまた柔らかく尻から地面に置いてくれた。十季を腕から離すと藍さんが俺に抱きついた。

素っ裸の俺に。

藍さんの左腕が俺の右腕ごと抱きしめ、背中に回っていた。そして右の腕を俺の左の肩から後頭部を包み込むように抱き寄せていた。そして、藍さんが俺の頬に自分の頬を密着させた。藍さんの身体の体温が伝わってきた。

藍さんは、さらに腕と頬を強く押し付けてきた。

「太吾さま…」

そして、そう震えるように囁いた。

 

15

 

そして、藍さんの手が、俺の股間の…その、亀裂が入ったかのようにひりひりとしていた足の付け根の部分を優しくさすった。

あ…藍さん…。

「おいたわしや…」

藍さんの伏し目がちな目が潤んで震えていた。藍さんの手は優しく優しく俺の股間を撫でた…あれ、へ、へんなこと書いてる俺?

でも…でも、書き方はへんだけど、その藍さんの傷をいたわってくれる気持ちが俺には、じかに伝わって来たんだ。藍さんの愛撫で、俺の傷の痛みは次第に薄くなって行った。…あれ? 俺またへんなこと書いた? 愛のある撫で方だから…愛…撫でいいんだよね…。ね…。

「オ・ウ・ド…」

突如、くぐもった声が天から響くように聞こえてきた。

ピクリと反応した藍さんの手が止まった。

俺もドキッとしたぞ。恐ろしく呪いのこもった声だった。

「ウ・ラ・ギ・ッ・タ・ナ…」

その声は…どうやら武甲丸の頭部の辺りから聞こえてきた。しゃ、喋るんか、このロボはっ!

藍さんではなく「オ・ウ・ド」黄土と呼んだ。そして「裏切り」という言葉を発した。

そうだ。藍さんは、藍さんではない。秩父忍ビ三峰衆の七くノ一のひとりであった藍さんではなく、その藍さんになりすまして俺に近づいた秩父忍ビ武甲衆の刺客、黄土…さん…くん、だったのだ。

「ウラ・ギリ・モノ・ハ・死・アル・ノミ…」

武甲丸からそんな響きが聞こえたかと思うと、ひとつの腕の手の先から突然炎がゴオと発射された。炎はうねる竜のように…って竜なんか見た事はないけど、だいたいそんな感じで恐ろしげな音を立ててこちらに襲い来たっ!

うわあーっ!

藍さんが素っ裸の俺の肉をむんずと掴むと驚くべき力で俺を放った。同時にかたわらの十季を蹴った。俺は宙を舞った後、地面に叩きつけられ転がった…が、まるで痛みはなかった。藍さんの術みたいだ。柔らかく俺を傷つけない放り投げの術だった。蹴られた十季も転がり、また俺のかたわらにおさまった。まだ気を失っている様だった。十季には…蹴りなんだ…。

その場に残った藍さんを、竜の炎が襲った。一瞬のうちに藍さんが火だるまとなった。

藍さんっ!の、黄土さんっ!

だが炎の中から藍さんの声が聞こえた。

「武甲忍法 火炎返しっ!」

途端、炎は弾かれたようにうねり返り、逆流した。そして武甲丸の本体を襲った。

に、忍法っぽいの出たーっ!

武甲丸はにわかに自分から発した炎に包まれ、燃え始めた。木製の部分が多いのでよく燃えた。

藍さんは…というと、炎を返しはしたが、すでに一度浴びた炎により戦闘服を焼失させていた。

藍さんは、ほとんど素肌のままとなっていた。そこに、おしるしばかりの鎖帷子で出来たパンツ…パンティ? いや、腰蓑…なんかそんなものをまとっていた。全身はすでに焼け焦げた跡が見えた。

藍さんの素肌は、焼け焦げを負っていても白く透き通る美肌であることが分かった。同時に、やっぱり、藍さんではないことも…。

その姿は…それにしては恐ろしく細身ではあるが…確かに女性ではなかった。

俺はいろんなことで頭がいっぱいになっていた。だが、そんな混沌とした中で率直に脳裏に浮かんだ言葉は…

美しい…

だった。

藍さんの裸体は…美しかった。

ああ、それなのか。

この状況で俺の脳は、藍さんに見とれよと命令を下していた。

藍さんは、はっと俺を肩越しに見た。そして、露わになった自分の胸を腕で隠した。それが余計に俺にはやられる要素であった。

か、可愛い…。

素っ裸の俺と素っ裸の藍さんみたいな黄土くんが、戦闘の中ではにかむように見つめ合っていた。

さくっ

ん? 俺の地面に着いた左手の手首部分の上あたりに微かな痛みを感じた。見ると…ボールペンほどの小さな苦無の先が手首に当たっていた。苦無を持っていたのは…気絶したままの…十季だった。

 

(つづく)

| 大地丙太郎 | くのいちせぶん | 22:34 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 07
 菜『じゃあ…』
と、奈々、今度は大胆にも帯を解き始めました。わ、コレには解説のアタクシもビックリっ!
十『あああ、なになに? いいよいいよいいってばっ!』
帯を解いた奈々、その帯を十兵衛に差し出します。
奈『これで』
十『これで?』
菜『お金ないんで…』
十『そういうことかよ…』
そういうことかよ…と、アタクシもホッといたしました。
菜『一緒に…いさせ…て…』
そう言った菜々、言葉続かず、すっと十兵衛により掛かるように倒れます。抱き留めて、青ざめる十兵衛。
十『お、おい……おいっ』
ああ、気絶の奈々でありました。
柳生を辞めて気ままな旅に出た剣豪柳生十兵衛。弟、又十郎が自分の任務の代わりにさらって来た、豊臣の落とし胤、菜々を助けてしまった。その後サナーダ10Jr.に襲われたり、ヤクザの喧嘩に巻き込まれたりしつつ、なんとかかわしていまやふたりは呑気に茶店におりました。
菜々ちゃん、かなりながっつきで飯をかっ喰らっております。とっても旨そう。
十兵衛、おばん目を丸くして見ております。あ、このおばん、例の十兵衛をポカンとやったあの29歳の茶屋のおばんであります。
十『腹減ってたんだ…』
十兵衛の方は茶を飲みながら、菜々の様子をポカンと見ております。可愛子ちゃんががっついて飯をかっ喰らってる姿と来たらギャップ萌え〜。なんて思っているうちに菜々、2膳め、3膳め、4膳め、5、6,7膳め。積まれるどんぶり。ギャル曽根かっ!ってちと古い。
11丼重ねたところで…。
菜『はあ〜』
菜々、十兵衛に向き直りぺこりと頭を下げる。
菜『ごちそうさまでした』
さすが実はお姫様、この辺は少しお上品。
十『はい…よく食べましたね』
菜『はい、よく食べました』
十『おば…おねえさん、お支払いはまだあの刀分でいいよね』
おば『けっこうよ…あれは大分値打ち物っぽいじゃないかい……』
十『そりゃそうだよ、東照神君から戴いた家宝だもんな…』
おば『なんだいその、とうしょほほって…』
十『徳川家康公だよ』
おば『とくがわいえやす…なんか聞いたコトあるね』
十『もういいや…』
なんてちょーどうでもいい会話をしているところに割り込む甲高い声。
さくら『おひけえなすって!』
十『ん?』
見ると十兵衛の目の前に、ん?誰だこの旅がらすのおねえちゃんは?
さくら『早速のお控えありがとうござんす』
十『いや、まったく控えてはおらぬが…』
構わず続けるおねえちゃん。
さくら『手前生国と発しますところ駿河にござんす。駿河駿河と申しましてもいささかひろうござんす。駿河の国は沼津にござんす。霊峰富士のわき水で産湯を遣いその名もさくらと申しやす。きょうこう万端お見知り置きのうえ、以後よろしゅうお願いいたしやす』
そこで十兵衛思い出した。
十『おう、さっきのねえちゃん、生きてたの?』
さくらと名乗ったそのおねえちゃん、びっしと十兵衛を指差して目を輝かせます。
さ『柳生十兵衛っ!? 柳生十兵衛だよね柳生十兵衛!』
十『お!? 旅烏のおねえちゃんがなんで知ってんの?』
さ『知ってるよお〜、アタシ、柳生十兵衛の大ファンなんだからさ。あ〜、ひえ〜、モノホンだよお〜。眼帯触っていい? へえ〜、柳生十兵衛の眼帯って右とか左とかホントは片目じゃないとかいろんな説があったんだけどさ、左だ左、あははははっ!』
とかなんとかまくし立てながら十兵衛をあちこち観察するさくらおねえさん。どうやらそうとうな柳生十兵衛おたくでございますなこれは。さくらねえさん、ふと傍の菜々に気づきます。
さ『こちらのおあねえさんは? 愛人?』
十『ぶほっ!』
十兵衛、思わず茶吹き出す。
さ『やるなあ〜柳生十兵衛、ああ、いやいや、おおいに結構、天下一の剣の使い手柳生十兵衛だ、愛人のひとりやふたり、あれ? 刀は?』
さくら、十兵衛の腰を見て刀がないのに気づきました。きょろきょろ探しております。
ふと茶屋の厨房の方に立てかけて置いてある三池典太光世を見つけるさくらねえさん。
さ『おお、あったあった、ほほお〜、立派だあ〜、すげえ! かっけー! コレが柳生十兵衛の刀かあ〜。三池典太光世ってンだろ? 長いなあ〜おほほほほ、コレ、もらうねっ』と、まくし立てていたと思ったらさらっと最後に不可思議なことを言い出す。
十『ナニ?』
さくら、自分の腰の刀を指差します。
さ『さっき、折っただろ、アタシの刀。だから、コレ、もらう』
十『かあ〜、お前の駄菓子屋で買ったようなへっぽこ刀といっしょにすんなよ』
さ『駄菓子屋で買った? たははは、まあ似たようなトコだったけどさ、刀は刀だ』
さくら、三池典太光世を早速差しております。それを見た十兵衛は余裕の笑いを見せる。
十『いいよ、別に…』
さ『ほんとかっ!?』
十『ただし、この刀はこの茶屋で飲み食いした分の差し押さえになってるからな、ダンゴ代とこの丼飯十一杯分お前さんがおばさんに払えばな…ああ、あとこの茶代…』
さ『いーのかよそんなちぃっちぇー金で…』
十『いいよ…』
さ『ひえーーっやったあーーー! 言ってみるもんだなあ〜!』
十『大事にしろよ、それ柳生家が東照神君家康公より賜った由緒正しい家宝の刀なんだぜ』
さ『まーじっすか!徳川の家康さんつーたらアタシの同郷の偉いさんでさあ〜、うわあ〜運命感じちゃうなあ〜、これアタシに回ってくるべくして回ってきたんでしょうねえ〜、へへへ〜同郷神君のかあ〜』
すっかり浮かれるさくらねえさんであります。はっとカッコをつけて十兵衛の剣を抜いてみようとしますが、これが抜けない。刀の身が鞘に引っ掛かって抜けない。
さ『あり…?』
十兵衛、それを見てくすりと笑う。
十『抜けないかもしれません』
さ『木刀ですから…って落語かよっ。これ長過ぎるよ柳生十兵衛〜』
十『貸してみな』
十兵衛、さくらから三池典太光世を受け取り腰に差しますと、さっとあっさり抜いて見せました。
さ『あら?あっさり抜けるじゃねえか』
さくらねえさん、も一度抜いてみる。やっぱり抜けません。
さ『どうやんだろうなあ…???』
と、その時。
美『やぐーずうべえーーーっ!』
と、ぼろぼろの美影が抜き身ぶら下げたままやって参りました。
手を上げて迎える柳生十兵衛。
十『おー、美影え〜、生きてたあ〜 さすがは柳生忍軍の美人くの一』
美『ばかやろーーーっ!』
美影、十兵衛に斬りかかります。
十『うわっ、なんだよいきなり!』
すらりとかわして十兵衛が言います。
美『いきなりじゃねえ!』
美影、泣きながら十兵衛に斬りつけ、十兵衛は必死でよけております。
十『おま、本気じゃねえかよっ』
美『ばかあっ! 十兵衛のばかやろおっ! 斬られろ〜!』
がぼっ!
十兵衛さん、美影の口にイモをぶち込みました。
がっしっ!
すかさず美影を抱きしめて、背中をとんとんと撫で、なだめる十兵衛であります。
十『どうどう…』
馬をなだめるのとおんなじ。
美影ちゃん、それでもって落ち着いて参りました。
美『ひどいじゃないですかあ〜十兵衛さま〜』
と、十兵衛の胸で泣く美影ちゃんであります。
十『おーおー、おま、どうやって又たち巻いたの?』
美『煙幕…』
映画ならここで【回想】画面がはいります。
ボーンと煙幕玉を地面にたたきつけ煙幕を張って又十郎柳生組を巻く美影。
「うわーーー」と又十郎柳生軍。
てな感じ。
十『さすが煙幕美人の美影ねえさん。あれは? 妙なごろつき侍たち。あいつらはどうやって巻いたの?』
美『煙幕…』
【回想】
ボーンと煙幕玉を地面にたたきつけ、煙幕を張ってサナーダ10Jr.を巻く美影。
「うわーーー」とサナーダ10Jr.
十『美影ちゃんの煙幕はたいしたもんだねえ〜』
美『ほしたら今度はやくざ一家だしい〜』
十『そうそう、やつらはどうやって巻いた?』
美『煙幕…』
【回想】
ボーンと煙幕玉を地面にたたきつけ、煙幕張って猪吉一家を巻く美影。
「うわーーー」と猪吉一家。
まあ、おんなじスタイルであります。
十『美影ちゃんは煙幕使わせたら右に出るものはいないなあ〜。さすが柳生忍軍切っての美人くの一!』
美『いい子いい子して下さいっ』
十『え?』
美『いい子いい子っ!』
ほっぺた膨らませて頭を突き出す美影ちゃん。十兵衛、美影の頭を「いい子いい子」となでてあげます。
にぃ〜と顔を崩して喜ぶ美影ちゃん。
その様子をあぜんと見ている菜々、さくらでありました。
美影さん、一転、ぷーと膨れた顔になり、ばっと、十兵衛から飛び退きます。
美『大体!』
お、今度は怒ってる。
美『私を、十兵衛さまの一番弟子にして下さる約束をしていたのに、なーんで勝手に柳生を出てくわけ〜? で、ございますか!?』
十『いちばんでし? なに? そんな約束したっけ?』
美『ええ〜〜〜〜!? 覚えてない〜〜〜!?』
はい、ここで再び回想であります。
美『あの日っ!』
【回想・ここは柳生屋敷近く】
酔っぱらってる十兵衛。
千鳥足。
ささっとその前に意を決した美影が飛び出す。
美『十兵衛さまっ!』
十『なに〜?』
美『私を、十兵衛さまの一番弟子にしてくださいまし!』
十『いいよお〜』
美『本当ですか?』
十『そのかわり、チューさせてえ〜』
美『え〜〜〜〜〜〜〜!?』
というところで【回想】終わり。
さ『サイテーだ…』
十『言ったかなな、そんなん…』
美『言いましたっ!』
十『まるで覚えてない…この生真面目一方のオレがそんなこと言うはずないと思うんだが…』
美『言ったの!』
さ『あんのう〜、ちょっとお話に割り込ませていただきます〜』
美『ん?』
さ『そんで、その…美影さんとやら、アンタ、実際、チューは…』
さくらの言葉に美影さん、顔を真っ赤にさせてはにかみます。
さ『させたんかい!』
十『したんかっ!』
さ『(美影に)あんたもあんただわ』
美『だってえ〜っ』
さ『一番悪いのはこのサイテー男だぞコラ柳生十兵衛!』
十『って言われても覚えてないからなあ、これっぱかしも…』
さ『天下に知られた柳生十兵衛が、ただのパワハラおやじだったとはなあ〜、がっかりだねえ〜』
十『おいおい、人聞き悪いコトを言うな…』
美『ああ〜〜〜〜〜ん』
十『おいおい、泣くなよ』
さ『弟子にしてやんなよ柳生十兵衛〜、可哀想に…』
十『弟子とかそういうの面倒くさいんだよ』
さ『自分のやっちまったことには責任とんな』
十『ええ〜、責任取るんだったら、やったの覚えていたかったなあ〜』
さ『どすけべ』
十『どすけべ言うな!』
さ『四の五の言ってないで、してやんな、二番弟子に…』
美『え? なんで二番弟子? 一番弟子は?』
さ『アタシ』
さくら、そう言って腰に差した三池典太光世を美影に見せる。
美『ああ〜〜〜〜〜っ! 十兵衛さまの刀!』
さ『えっへん、もらった』
美『もらった?』
美影、十兵衛きっと睨みます。どきんとクビをすくめる十兵衛。
美『どうゆーことですか!? こんな何処の馬の骨かも分からないちんちくりんな旅烏になんでこんな大事な刀あげちゃうわけ?』
さ『ちんちくりんてなんだよ!』
十『ははは、まあ、いろいろな経緯がアリでだな…』
菜『いろんな人とチューするんですね…』
にっこりと菜々がいきなり話に入って来ます。
美『え?』
十『あたた…、キミはまた何を言い出すの?』
美『いろんな人とチュー? 誰と? 誰とチューしたんですか!?』
十『してないしてない、まだしてません!』
美『まだって!? ていうか、この子ナニ?』
さ『柳生十兵衛の愛人…』
美『十兵衛えーーーーーっ!!』
十『違う違う!こらっ、へんなことゆーな!』
菜『まだ違いますよ』
美『まだってえーーーっ!』
十『キミもややこしい言い方すんなって! まだももうも後ろも前もないのっ!』
菜『でも、ずっと一緒にいるって言ってくれました』
美『ずーっと一緒にぃ〜!?』
十『ずっとは言ってないだろずっとはっ!』
美『なあにぃ〜、言ったの? 言ってないのお〜?』
菜『十兵衛さま…』
十『え?』
菜『私も一番弟子い〜♡』
十『ええ?』
美『な、なんであたし以外全部一番弟子なんだよっ!』
柳生十兵衛と三人の娘たちのやり取りを微笑ましく見ているおばん29歳でありました。
◉155
ですがこの時、はしゃぎながらもある特別な感情で十兵衛を見る菜々に、さしものおばん29歳も気づかなかったのであります。
そりゃ気がつかんわなただの茶屋のおばんでございますから。
一方その頃、その賑やかおばんの茶屋にわりと近いところに、柳生又十郎が、なんだかエラそうに腕を組んで仁王立ちしておりました。なにやら不機嫌なお顔。
そんな又十郎の元に又十郎柳生軍がバラバラと駆け寄ります。
そのうちのひとり尾崎幹三郎が厳かに頭を下げます。
尾『見当たりません』
なんだか役に立たなそうな報告。
又『さほど遠くへは逃げておらぬはずだ。草の根分けても探し出せっ!』
こちらもさほど効率の良いと思えない指示をする。
柳生軍『はっ!』
とまあ無駄な集合をした柳生軍は再び散ります。
ひとり残る又十郎。
又『兄者、兄者のお命、この又十郎が戴きまする…』
わかりやすく独白をして又十郎もハケます。
そのまた近くにはサナーダ10Jr.なサスケの介が、これまた腕を組んで仁王立ちしておりました。
サスケの介の元に、バラバラと駆け寄るサナーダ10Jr.であります。一歩出て恭しく頭を下げたのは頭空っぽのイケメン男霧キリ丸でございます。
霧『見当たりません』
霧キリ丸も使えない報告を致します。
サ『さほど遠くへは逃げておらぬはずだ。草の根分けても探し出せっ!』
これまた発展性のない指示をするサナーダ10Jr.のリーダーサスケの介が
サナーダ10Jr.『はっ!』
去りゆくサナーダ10Jr.たち。
サ『菜々姫よ、真田のお宝はこのサスケの介率いるサナーダ10Jr.が戴きまする…』
と、サスケの介、無駄な独り言を吐き、その場を走り去りますが、何かを思い出してカメラの前に戻って参りました。
サ『あ、それと、徳川幕府を倒し、我等が、天下を支配するのだ、ふはははははははっ!』
はい、OKです。と、スタッフの様に言いたい感じ。
さてそれではカメラを茶屋に戻しましょう。
♩〜
おや?なにやらリズミカルな音楽が聞こえて参ります。
見ると、お茶屋の前の広場に、十兵衛を先頭にして、菜々、美影、さくらが並んでおります。
♩〜
どうやらリズムに合わせて十兵衛、棒切れで剣の握りを美影たちに教授しているようでございます。
♩    柄(つか)はこうして
        こうして握る
  わんつーわんつー 降り下ろし
  斬り上げ 袈裟斬り 
       わんつーわんつー
  抜き胴 山形 
       わんつーわんつー
十『もういっちょー』
♩    柄(つか)はこうして
        こうして握る
  わんつーわんつー 降り下ろし
  斬り上げ 袈裟斬り 
       わんつーわんつー
  抜き胴 山形 
       わんつーわんつー
なるほどこれぞ踊る柳生十兵衛♩
柳生ブートキャンプとも言えましょう。ちょっと古いけど。
見ている29、茶屋のおばん。一緒になって踊ってる。
お『こいつぁいいね、若返る。美容体操にばっちりだ。そうだっ』

リズムに乗っておばんたら、お茶屋の表に「柳生十兵衛の柳生美容剣道場」の看板作って立てます。
途端に集まる江戸時代の女子たち。
柳生流が剣術エクササイズになっちゃった。
♩    わんつーわんつー 降り下ろし
  斬り上げ 袈裟斬り 
       わんつーわんつー
  抜き胴 山形 
       わんつーわんつー

  柳生十兵衛の美容剣術―
  新陰流の流れ汲む
  由書正しい剣術美容―
踊る柳生流が続きます。

お『あんたコレは案外ナイスな事業だよ
柳生十兵衛の柳生美容剣道場で儲かった銭を入れた函を抱えてほくそ笑むおばん29であります。
お『アンタ、このまま続けておくれよ、ウチもうかるよ』 via TheWorld for iOS 
十『ははは、まあ、もうかるのはいいとしても、あんなんで剣術がうまくなるはずがないしなあ…、美貌にいいってのもちょっとはったりっぽいし、それに、あんまり、柳生十兵衛の名前は使いたくないんだよ…』
と、柳生十兵衛。
お『そうかい…もったいないねえ』
十『明日からはまたきままな旅に戻るよ、オレは』
そういう十兵衛に、おばんもそれ以上は野暮な引き止めもせず、分前を十兵衛に差し出します。
お『ほれ、もう食い逃げなんかすんナヨ、天下の柳生十兵衛が』
十兵衛、その金をほとんど戻してほんのひとつまみだけ懐に入れて立ち上がる。
十『のんきな名なしの素浪人さ、すかんぴんがお似合いのな…』
そう言いながら夜の庭先にふらりと出て来た十兵衛でありました。
空には明るい月がぽっかり。
十『ん?』
見ると、菜々が、ブートキャンプを懸命におさらいおります。ただ、ひょろひょろでさまになっておりません。
十兵衛、にっこり笑ってそれを見る。
十『随分熱心だなあ…』
十兵衛、出て行って声でも掛けてやろうと思った時、菜々の只ならない表情に気がつき、思わず足を止めました。
十『ほお、あれは相手を想定している目だな。誰かを斬ろうとしている目だ…』
うーむ…と十兵衛、菜々に殺気に近い気迫を感じるのでございました。
その時……。
菜々に近づいて来たのは美影ねえさんでありました。
その場に身を隠す十兵衛であります。
菜々、美影の姿を見た瞬間に今までの気迫の表情がほぐれました。
菜『あ、美影さん、ねえ、ここが良くわからないの、教えて』
美『え?』
美影ねえさん、いきなり菜々に気安く言われて戸惑います。
美『わ、私もソコはちょっと苦手…』
菜『だって、美影さん、柳生なんでしょ?』
菜『十兵衛さんの一番弟子なんでしょ?』
美『なりたいと思ってるだけで…』
十兵衛、聞いております。
美『柳生もいろいろあって、私は、忍術の方…』
菜『くの一ですか?くのいちせぶんですか?』
お隣の読みものと混ざっちゃったよ。美『柳生だけど…』
美『習ったのは剣の修業より忍術ばっかりでね…』
菜『忍術もかっこいい…』
美『かっこいいかなあ〜』
菜々『…様な気がするけど…』
美『かっこよくないよ…私、正直言って、忍術の中でも煙幕玉しか出来ないんだよ…』
菜『えんまくだま…? あの、縛られても間接外して逃げる方法とかは?』
美『ああ、そういうのは基本だから出来るよ…』
菜『すっごーい! 出来ちゃうの?』
美『ま、まあ、そのくらいはね…あれは関節外すとかそう言うんじゃなくてカンタンなんだわ、こうやってこうやって…』
美影、ちょっと乗せられて良い気分になっちゃって菜々に、手首の返しとかをやって見せておりまする。
菜『教えて?どうやるの?』
美『えっとね、ここまで返したらこいやって…』
菜『痛っ』
美『あ、力入れちゃダメ』
などとふたり楽しそうにやっているのを物陰でじっと聞いてる柳生十兵衛でございます。
美影がふと、手を止めます。菜々、そんな美影を見ます。
美『…私は…十兵衛さまの剣に、小さい時から憧れてた。それで、直に十兵衛さまにお願いしたの、剣を教えてくれって…』
菜『…』
美『そしたら、いいよって…キミ可愛いからOKって…』
聞いてる十兵衛、あちゃあ〜となる。
菜『で、チューも?』
美影さん、ぽっと顔を赤らめる。
美『う…うん…いや、いいんだ、別に、チューは…』
菜『ん?』
美『初チューが十兵衛さまで良かったから…』
菜『ほ……』
聞いてる十兵衛、も一度あちゃあ〜となります。
美『菜々ちゃんは…』
菜『え?』
美『何者なの?』
菜『なにもの?…何者なんでしょう?』
美『え?』
菜『何者なんでしょうね…?』
美『…何者なんでしょうねって…知らないってコトじゃないでしょう?』
菜々、うなづきます。
菜『…私は豊臣秀頼の娘です』
美『ええっ!?』
美影、思わず引いて構えてしまいました。
美(敵っ!)
菜『って…言われました…母に…』
美『あ…』
菜『母は、普通の山のオンナです…私も…ずっと、山の中で暮らしていました…』
美『お母上と?』
菜『はい…』
美『お母上は?』
菜『……』
美『……』
菜『私は…豊臣家の埋蔵金の地図を持っているんです。それで、徳川方の柳生と、豊臣方の過激派って言われているサナーダ10Jr.両方から狙われている…』
美『そ、そうなんだ…』
菜『そこを十兵衛さまに助けられたんです…』
美『ああ…そう…そうなんだ…はあはあ…埋蔵金の地図って…も、持ってるの? 本当に…』
菜『持ってます』
これには十兵衛もぴくんとなります。
十『持ってるんだ……』
美『言っちゃっていいの?』
菜『なんでですか?』
美『柳生だよ、私も…』
菜『斬りますか?』
美『う…、き…斬らないよ私は…そういうのあんまり関係ないし…じゃ、別に、十兵衛さまの…愛人…てコトないのね』
菜『そっちですか?』
美『…じゃないんだね…?』
◉188b
菜『十兵衛さま、大好きです』
美『ぬおっ!』
美(敵!)
十兵衛、思わずバンザイしてしまいました。
美影がちょっとヤケクソ気味で立ち上がります。
美『…さっきのとこ、私も練習しよちくしょー』
菜『ワタシもワタシもっこんちくしょー』
美影、菜々とともにまた同じところを練習いたします。
そこにやって来たのはさくらであります。
さ『あ〜、なにふたりで仲良くやってんの? 混ぜて混ぜて!』
三人で柳生ブートキャンプが始まります。
菜『私たち大分強くなってますかね』美『そりゃなってるよ一番弟子3人娘っ!』さ『柳生新陰流の渡世人〜♪』
十『ばっかだなあ…あんなんやってもどうにもならないのに…』
笑って見ている柳生十兵衛でありました。
A『やいやいやいやいやいやい!』
と、そこにやって来たのは…あ、忘れちゃった人もいるかしら?
昼間、さくらとチャンバラやってたガラの悪い連中。猪吉一家。Aと言うのは猪吉子分A助のことであります。
さ『来やがったな、いんちき一家!』
さくらが威勢良くがなるのでありました。
B『いんちきじゃねえ、「猪吉一家」っ!』
あくまでも律儀に訂正する子分Bであります。
A『やいこのやろっ! 今度という今度は逃がしゃしねえぞっ!』
さ『ああ、逃げやしねえよ、いんちき一家!』
B『だーかーらー「猪吉」っ!』
さ『どっちでもいいわっ!』
笠間の猪吉『どっちでもいいとはなんてコト抜かすんじゃいっ!』
凄みを聞かせて現れ出たのは、そのいんちきな猪吉一家の親分、笠間の猪吉でございます。
猪『てめえ、よくも舐めた真似をしてくれたな』
さ『はあ、出たな、おめえがこのいんちき一家の親分かっ?』
B『「猪吉」っ!』
A『ヤイこの三下おんな! 耳の穴かっぽじって良く聞け! このお方はな、この街道筋じゃあちったあ名の知れた猪吉一家の親分、その名も笠間の猪吉親分だ! 覚えておきやがれ!』
さ『いかさまのいんちきだあ?』
猪『いかさまのいんちきぃ〜〜〜〜!!???』
B『だ〜か〜ら〜、耳掃除しろって言っただろうがあ! いいかっ! 「笠間の猪吉」!』
さ『どっちでもいいって言ってんだよ! いかさまでいんちきなのは同じじゃねーか! やい、お前らはいずれこっちから出向いてドブさらいしてやろうと思ってたんだよ!
こっちこそ今度と言う今度はね、この桜吹雪のさくらねえさんがっ!』
なんだか威勢のいい啖呵を切るさくらねえさんが、ぶわっと腕をたもとに引っ込めたかと思ったら、懐から襟元に大きく腕を振り上げて、威勢良く上半身の着物をはだける。もろ肌さらけ出すさくらでありました。
あ、ちゃんと胸にはきりりとさらしを巻いてますから乳がぽろんなんてコトはござんせん。そこのおとうさん、残念がらない(^^;; そういうのは多少『くのいちせぶん』でやっております。
さて、そのさくらねえさんのもろ肌には、なんと舞い散る三枚の桜の花びらの入れ墨が
びやーっと派手に…と、思ったら、いやいや、肩にちんまりと可愛らしく三枚であります。
ええーっ?
美影、菜々もそれ見てあんぐり。
十兵衛も物かげから見ております。
さ『この桜吹雪が目に入らないかいっ?あんたらの胴と頭を泣き別れにしてやるから、覚悟しなっ!』
と、すっかり遠山の金さんの遊び人姿の決め口上のテイでカッコつけます。
ぶーーーっ!
思わず、その半端な(可愛い)入れ墨に吹き出す十兵衛であります。
十『…可愛い…』
猪吉親分はじめ、猪吉一家も一様にそのさくら三枚に見入りますが…
猪『目に入るかそんなもんっ!』
A『目立たなすぎでぇっ!』
と、一斉にドスを抜きます。
さ『おわっ?びびらねえのかよっ!抜きやがったなあ〜っ!』
さくら、ここぞとばかり、十兵衛からもらった三池典太光世を抜こうとしますが、やっぱり抜けません。
さ『と…ああもう、肝心な時に抜けないなあ〜っ!』 
そこに、茶屋のおばんがささっと登場。
お『お前さん、コレ使いなよっ!』
茶屋のおばん(29)が、さくらにすりこ木投げてやる。
さ『(受け取って)あ、ありがとうよおばちゃん』
お『こいつら常日ごろから威張り腐っちゃあ、おれっちらの上前はねてのうのうと生きてる虫けらだからね、やっつけちゃっておくれよ!』
さ『へっへー、わかったよおばちゃん』
お『29さいだけどなっ』
猪『虫けらたあ抜かしやがったなこのばばあっ!』
お『29さいだっちゅーてるだろっ!』
ぴしゃん!
おばん、猪吉に一気に近づいたと思ったらいきなりのビンタをかましてピューと逃げます。
猪『あいて、ちきしょう!』
不意をつかれた間抜けな親分であります。
美影、菜々も立ち上がります。
美『私たちもさくらちゃんに加勢っ!』
菜『します』
美影、菜々もレッスン用の棒切れ持って、さくらの両脇に立ち、びしっとポーズ。
おっと、ちょっと古いがチャーリーズ・エンジェルっ!
『ひぃ〜』とのまれて、案外おびえる猪吉一家でございます。
十『カッコだけは決まってるなあ』
と、くすくす見ている柳生十兵衛。いざとなったらいつでも飛び出して加勢するつもりではございます。
猪『しゃらくせえっ! てめえらやっちめえ!』
『おーっ!』と答えて猪吉一家がドスを抜き放ちかかり行くっ!

チャンチャンバラバラ砂ぼこり
斬ったら血が出るターラタラ
御用の提灯ブーラブラ

なんて、活動写真のような乱闘が始まったのであります。

ポカリっ!『あ痛っ』ポカリっ!『あ痛っ』
チャーリーズ・エンジェル フルスロットルな三人娘、菜々、美影、さくら、けっこうばりばりかっこよく、次から次へと猪吉一家をぶっ叩いております。オンナ三人の剣劇はなかなかの見物。それを観ていた柳生十兵衛。
十『ほほお、結構強くなってるなあ…アレ、効果あるンだなあ…』
などと呑気に言ってると、ポカリっ!
十『あ痛たっ!』
いつの間にか横にいたおばんに頭をひっぱたかれた十兵衛であります。
お『あんたナニぽかんと見てるんだよ。女の子が危険な目にあってるのにこんなところで高見の見物なんてそれでも男かいっ』
十『ああ、わかったわかった、はいはい』
十兵衛、もっさりと出て行きまして、参戦いたします。
といっても、女の子達にポカリとやられた猪吉たちをさらにもうひとポカリやる程度。
そんな呑気なポカリ剣劇をやっとおりますと、
ゆらりと登場するイカつくヤレた用心棒の先生。どうせその辺の食いっぱぐれ浪人ではありましょうが、それでもおサムライの端くれ、
さくらに向かい振り下ろす剣はスピードと鋭さが違う。
さ『おじゃひぃ〜』
思わずおじゃを付けた悲鳴をあげるさくらであります。
がっ!振り下ろすその腕を掴みそのまま捻り込んで用心棒の体ごと地面に転がせたのは十兵衛でありました。用心棒の先生『あひん』と可愛い声を発して尻もち。

一方、菜々が、親分猪吉の首根っこをひっつかまえた。用心棒からの攻撃を切り抜けたさくらがその猪吉の腹に思い切り蹴りを入れる。
猪『ぐあひいっ!』
美影、すかさず棒を捨て、自分の剣を取り、抜き放ち、猪吉の鼻の下にびしと付けました。
美『さくらちゃん、斬っちゃおうか?』
さ『ああ、そうだねえ…でも、ただ斬るのはもったいないねえ〜。随分と気質の衆に迷惑をかけたみたいじゃない…』
菜『あ、じゃあ、まず鼻を落として、次に目をくりぬいて、それからえーと、あ、耳をそいで、みなさんに与えた苦しみを味わいながら死んでもらうというのはどうですか?』
可愛い顔して菜々が言う。
猪『ひい〜』
A『残酷……』
子分A、想像して気絶してしまいました。気の弱いヤクザもいたもんだ。
美『そりゃいいねえ〜』
さ『その辺の道にさらして、そのお仕置きをこいつらにいじめられた町の人たちにやらせてあげたいねえ〜』
お『ああ、そりゃいいねえ〜』
B『残酷…』
Bも想像して思わず気絶と来たもんだ。
猪『い、命だけはご勘弁を〜』
美『ダメっ!』
美影、容赦無く言ったと思うとしゅぱっーっと剣を一振りいたします。
猪『ひいいいい〜〜〜〜!!』
死んだかと思って悲鳴を上げる猪吉親分
ぽっとん。
地面に落ちたのは猪吉の首…ではなく、ちょっと縮れたちょんまげ。と、あと髪の毛全部。
おや?
見ますれば、キレイにスキンヘッドになっている猪吉親分でありました。
美『…と、言いたいところだけど、頭を丸めて反省するなら許してあげます』
猪『はい〜〜〜〜っ、反省します〜、ひ〜っ!』
すっかり弱って這いつくばって頭を下げる猪吉親分。さっさと逃げ出そうとするところを、さくらがもう一度ひっつかまえました。
さ『でも、髪の毛生えてきた頃に又悪さ始める可能性あるよ、やっぱりここで斬っちゃおう、斬っちゃって、美影ねえさん』
美『そう? 斬るのは一向に構わないけど…』
美影、仕方ないという感じで刃を猪吉のハゲた頭の上に乗せる。
美『斬るか』
猪『ぜってえ〜しねえ〜! ぜってえしねえよお〜!』
さ『信じられない、ねえ、おねえさん』
と、これはおばんという名のおねえさん(29)の方に言うさくらであります

お『信じられねえ、後で闇夜の道でいきなり仕返しにグサリなんてやられたらたまらないよ、おねえちゃん、斬っちゃって斬っちゃって…』
猪『おおおおおおおれの目を見てくれ! このキレイなオレの目え〜〜〜〜!』
こんなやつのめ江戸かふぇがキレイな訳がない。
さ『きもっ!』
菜『あの、では中を取って…』
美『ん? 中を取って?』
菜『はい、腕一本と足一本落とすくらいにしておいたらどうでしょうか?』
他の猪吉子分達『(想像して)残酷〜(気絶)』
猪『うお〜〜〜〜っ!』
突如、猪吉、狂ったようにさくらをもはね飛ばして立ち上がり、諸肌脱ぎ、どすんとあぐらをかいて座り込んだから、一同びっくりでございます。
猪『ええーい、やってくんねえ!』
さ『へ?』
猪『そんなちまちま腕だの足だの言ってねえで、ひと思いにぶった斬ってくれいっ!』
さ『ほ…』
猪『どうしたいっ!? おれがもうぜってえしねえって言ったあの言葉がウソじゃねえってコトを、この命と引き換えに証を立てようじぇねえかいっ! オレも仁侠に生きる男だ! もうじたばたなんてするけえっ!』
さ『ほお〜、悪モンのくせに言うじゃないかい』
美『さくらちゃん…?』
さくら、美影ににっこりしてから、猪吉に向かいます。
さ『よし、わかったぜ、おめえがそこまで言うなら、行くぜっ!』
さくら、美影の剣を受け取り、すぱっと振り下げます。
猪『たはっ!』
ま、とりま、身を縮める猪吉親分。
さくら、剣を振り下ろしますが、猪吉のハゲ頭スレスレでキュッと止めたのであります。
十『…ほお…』
十兵衛、なにげにその腕の上達を見て感心したりしてます。
猪吉の方、目をつむっておりましたが、やがて、そっと目を開けました。
自分が死んでない事に気がつき、ぷはっと息を復活させる。
猪『へ?』
さ『ホンモンだな親分。よく逃げなかった…』
猪『あ…あ…あたぼうよ…』
さ『信じたよ、笠間の…』
と、さくら、パチンと刀を納めます。
助かった猪吉は、さくらに土下座。
猪『ねえさん、オレのこの命はおめえさんに預けたっ! オレだけじゃねえ、猪吉一家丸ごとねえさんについて行くぜ! 野郎ども起きろっ! 今日から俺達はいい猪吉一家になる!』
子分達、言われて気絶から覚めて起き上がり、キョトンとしております。
子『ええ? いつの間にそんな風になったんですかい?』
猪吉一家、ぱきっとキレイに並び、丸ごと、さくらに従順のポーズを見せる。
美影、さくら、菜々、十兵衛に向かって、ガッツポーズ。
美『十兵衛さまっ! どう? 私たちの上達ぶり!』
これには十兵衛も手を叩く。
十『いやあ、立派なもんだ、大したもんだ。免許皆伝だなあ』
美『ホントにっ?』
十『ああ、あんないい加減な体操でこれだけの真似が出来るとは、教え方が良いんだなあオレの…』
美『あんないい加減?』
十『ああいや、良い(いい)加減に上達したってコトだ。もう教える事はひとつもない。「十兵衛美容剣」卒業と行こう』
さ『なんか調子良くないかこの柳生十兵衛〜、なんかあんだろ、もう少しさ』
十『なんか?』
さ『ほら、その“極意”とかなんとかよお〜、そういうのまだ聞いてねえぜ』
十『そんなもんないない、漫画じゃあるまいし…』
さ『ないのかよ〜、しょぼ…』
なんてことで、見事、街道のダニを改心させた十兵衛とチャーリーズ・エンジェル…あ、この際ジューベーズ・エンジェル…でございました。
その翌朝の街道でございます。
柳生又十郎の元に、バラバラと駆け寄る又十郎柳生軍でござました。
尾『見当たりません』
配下のひとり、尾崎幹ノ進(だっけ?あんまり久しぶりなんで忘れました)が言う。しかも、ずっと探してたのかよっ!
又『一晩中探しても見つからぬとは…兄者の隠密術であろうか…引き続き、草の根分けて出せっ!』
いやいや、あんたたちがかなりのボンクラ。
柳生軍『はっ!』
熱血に答える柳生軍、ふたたび散ってゆきます。
又『兄者、豊臣の娘と…もしや、徳川に対し、謀反を起こそうというおつもりかも知れぬ…いや、そういうことにすれば、兄者のお命、この又十郎戴く理由が明確になる…』
などと忘れられないように目的などもさりげなく独り言で言い、走り去る又十郎でございました。
一方、その近くに、サスケの介が仁王立ちしておりました。
サスケの介の元に、バラバラと駆け寄るサナーダ10Jr.の面々。
こっちは多少寝不足でつらそうな顔をしている。
海『み…見当たりません』
海野六蔵が眠そうに報告。
サ『一晩寝ずに探してなぜ見つからんのだ! ううむ、者共っ!』
Jr.たち『はっ!』
サ『寝ようっ!』
Jr.たち『はっ!』
ざざっと手早く寝袋出して、その場で素早く寝入るサナーダ10Jr.たち。
うん、その方がいいよ。無理すんな。
サスケの介、既に眠りこけている。なにやらむにゃむにゃ寝言を言います。
サ『むにゃ菜々姫よ、真田のお宝はこのサスケの介率いる真田十勇士ジュニアが戴きまするぞ…』
以上、この後もなかなか出てこないので忘れられないように出しておきましたふた組の追っ手の実況でございました。
おや、サスケの介、まだなんか言ってる?
サ『あ、それと、むにゃ、徳川幕府を倒し、我等、伊代様のあれのあの…幸之介様が、むにゃ…天下を支配するのだ、むにゃむにゃ…』
はいはい、おやすみ。

さて、一夜が明けました。
空はからりと日本晴れ。街道を行く柳生十兵衛でございます。お供は菜々、美影、さくらのジューベーズ・エンジェル、そして改心したばかりの猪吉一家。全員たいそう嬉しそうな顔をしてついて歌なんぞ歌ってる。
猪吉一家『空は〜晴れ晴れ 俺たちは〜んがあんがあん♪
今日からとってもいいやくざ〜♪
笑顔の素敵な いいやくざ〜♪
十兵衛アニキに ついてくぜ〜♪』
その歌も含めて十兵衛アニキはやや汗たらでございます。
十『いつの間にこんな大所帯の旅になってるんだよ…』
菜々がさっと十兵衛の横に来て、十兵衛の袂をつかんで歩きます。あらま、菜々ちゃん、積極的。
十『およ?』
菜『だめですか?』
十『ん〜〜〜〜、いいよ』
いいのかい?
菜々、ほっと嬉しそうでございます。
だがしかし、ソレを見た美影ねえさんが、かちんと来た。
美『なんだよあの子はっ おかしくないかいアレって?』
と、隣のさくらに文句を言う美影ねえさん。
さ『は? そお?』
なんだかばててるさくらねえさんはどうでも良さげに答えます。
それもそのはず、さくらねえさん、左の腰に十兵衛からもらった三池典太光世、右にさくらの子分となることを誓った証に猪吉一家からもらったドスを差しております。そりゃ重たい。足を引きずっております。そして様にもなってないよ両腰に刀って。
一方、足どり軽い菜々ちゃん。
菜『楽しい…』
十『え、楽しいのか?』
菜『楽しい…いっぱいいて♪』
十『ああ…確かになあ〜いっぱいいるわ』
菜『ずっとひとりだったから…』
十『そうか…』
そうなのかと思いつつも、まあ立ち入ったことは聞かない主義の十兵衛でございました。
菜『今は楽しい♪』
十『そうか…オレは、ひとりがよっぽどいいがなあ…』
さくらが、へとへとと十兵衛の横に来ます。
さ『柳生十兵衛〜、このでっかい刀返すよ。重くてしょうがねえ。オレは猪吉にこのドスもらったからこれでいいよ』
十『そういうな、二挺剣ぶっ差しのさくら姐さん…なかなかいない鯔背な旅烏じゃないか、似合ってるよ。オレは腰のものがなくなって清々してるんだ』
さ『ええ〜、そうなのかよ〜』
がっくしうなだれ、歩足がもつれてよろよろと、また後方へ戻るさくらねえさんでありました。
菜々は、なぜだかさくらの腰の三池典太光世が気になる様子にございます。するりと十兵衛の袂を抜けるとさくらの横に行きます。
十『ん?』
まんざらでもなかった十兵衛、ちょっとさみしい?
菜『さくらちゃん、それ、ちょっと持ってみたい』
さ『菜々が? おお、いいよいいよ、ほり』
さくら、渡りに舟で菜々に三池典太光世を渡します。
受け取る菜々。
あら重い。ずしりと腕が沈みました。
それでも、興味深そうにいろいろ眺めたあと、差してみる菜々であります。
ふーむ、ふーむ。
誰より小柄な菜々にはちょっと不恰好。しかも刀など差したのは初めてでございましょう。慣れなくて歩きにくそうな菜々ちゃんであります。
十兵衛、ちょと振り返りそんな様子を見ております。
菜『重〜い』
さ『「重いだろー』
菜『重おーい』
さ『重いんだよ』
菜々、その刀を差した恰好で再び十兵衛の横に参りまして、刀を指している自分の姿を嬉しそうにアピールしております。なんと可愛い。
思わずほっこり苦笑してしまう十兵衛でございました。
と、そんな呑気な道中ながら、十兵衛は、時折、道の両サイドの気配を気にしております。
又十郎柳生組とサナーダ10Jr.の偵察者の気配は……ないようでございますな十兵衛どの……。
いや、待ちなされ。
十兵衛、前方に気にとられます。
前方から、編み笠の侍がやって参ります。
十兵衛、その侍から…いや、特に殺気は感じられず、ほっと小さく息を吐きました。
侍、十兵衛一向とすれ違う形になります。
十兵衛、そんな侍をやり過ごしますが…。
すれ違った後で、その侍、ツト、振り向き、十兵衛の背中を見つめておりました。
侍『柳生…十兵衛…』
そうつぶやく侍・五味睾之介でありました。
おっと、なんでございましょうか、新たな登場人物を加え、ますます先が読めなくなって参りました『踊る!柳生十兵衛』でございます。


| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 10:31 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 06
行こうとする十兵衛の影に隠れる奈々。
に可愛い…などとうつつを抜かしている場合ではございません。『あ、こいつ、柳生十兵衛だ』と言ったのはサナーダ10Jr.のアタマカラッポながらまあまあイケメンの霧きり丸でございました。
サ『なに?』
霧『オレ、一回見た事あるもん』
サスケの介、急に十兵衛を睨み、警戒いたします。
サ『そういうことだったのか…』
十『なにがそういうことだよ。そういうことじゃないっ! オレは柳生十兵衛じゃないっ!』と、霧きり丸に向かって、
十『良く見ろっ、オレはその柳生十兵衛とかなんとかよりずーーーっと二枚目だろうがっ』
霧きり丸もアタマカラッポでございますから、十兵衛の言うとおりに良く見ちゃったりしてますが、さすがにはっと気づきます。
霧『ごまかすな、柳生めっ、菜々姫の持つ豊臣家の埋蔵金の地図が目当てであろうっ!』
十『なんだそれは、知らないよっ! 勝手にいろんなこと言うな!』
サ『埋蔵金は我等豊臣方のモノだ! 柳生などには渡さん!』
十『ん? あんたらこの子が大事なのか、埋蔵金が大事なのかどっちだ?』
サ『斬れっ! 十兵衛を斬って埋蔵…あ、菜々姫を我等の手にっ!』
完全に埋蔵金目当てだぞサナーダ10Jr.、いきなり刀を抜きました。
それを見た奈々、がっちりと十兵衛にしがみつきます。
十『なんだよ、ちょっと釈然としねえなあ…』
言いながら十兵衛、奈々を後ろにかばう形を取ります。
『ぎゃおーっ!』まるで悪党丸出しの奇声をあげて襲いかかるサナーダ10Jr.
だいたい気負いすぎるやつは弱い。
十兵衛、ひょいひょいとサナーダ10Jr.の剣をかいくぐり、またもや菜々を連れて逃げて行く。
サ『ぬ、追えっ』
美『十兵衛さま〜っ』
ほうほうの体でやって来たのはちょっと汚れてる美貌の柳生忍軍・美影であります。
どうにか又十郎柳生組は切り抜けたらしい。
そこに逃げて来る十兵衛。
十『おおっ、美影っ 後は頼むっ』
美『はっ?』
十『まったくお前は頼れる柳生忍者だっ』
美『なにがっ?』
十兵衛、美影の横をすり抜け走りさります。きょとんの美影、ふと十兵衛の来た方向を見ますれば、
サスケの介以下サナーダ10Jr.がダンビラ振り回し集団で走り来る。
サスケの介が前方道の真ん中に立っている形になっている美影に怒鳴り込みます。
サ『貴様っ 邪魔立てすると斬るぞっ』
さっきも同じコト言われたばっかりの美影ちゃん。
美『なんだよもう〜 邪魔立てなんかしたくねえよ』
美影の声も聞かずに襲いかかるサナーダ10Jr.であります。
10Jr.『つぁーっ!』
美『どあーーーっ、なんだよおーーっ』
ヤケクソの美影、サナーダ10Jr.に立ち向かう。がんばれ美影ちゃん。
十『どうやら美影がうまくやってくれてるようだな』
十兵衛、振り返ってひと息つきます。
十『やつら真田かあ…真田って言えば豊臣の…ああいやいや知らん知らん気にならない気にならない…』
ついつい隠密仕事のくせが抜けずに推理を始めてしまいがちの十兵衛でありますが、傍の菜々に向かい、
十『ああ、ではな、なんだか最近は物騒だからな、気をつけて行きなさい…』
と、言ってまたもや立ち去ろうといたします。
が、菜々もまたもや捨てられた子犬のやうに十兵衛にすがろうとしている目を向けております。
十兵衛の袂(たもと)を握ろうとする菜々。
十兵衛、今度はするっと逃げる。
握ろうとする菜々。
するっと逃げる十兵衛。
握ろうと。するり。握ろうと。するり。
十『ダメよダメダメ』
言って十兵衛、さかさかと菜々から離れます。
十『俺はもう、いろいろ政治的なコトに関わりたくないのだ。気ままにのんびり面白おかしく生きたいのだ、な、元気で暮らせ』
と、行きますが、気になって振り返る十兵衛。
菜々ちゃん、じっと十兵衛を見ている。
十『むーん』
ほだされそうになる十兵衛。絶ち切って行こうとする。
やっぱリ振り返る。
菜々、まだ見てる……。
十兵衛、超困り顔になりました。
十『あ…ああ…た、達者でな…』
軽く手を振ってみる。
と、その時っ!
『わーーーーーっ!』
菜々の背後から何やら下品な奇声をあげて走ってくる下品な集団。
十『ん?』
又十郎たちでもない、サナーダ10Jr.でもない…エラく品のない連中であります。
おお、なにやら連中は刀…と言うよりドスを振りかざしている。
しかもチャンチャンバラバラとチャンバラしながらやって来るではございませんか?
なんだいこれは、新展開っ!
そのチャンバラに、ああ、このままでは奈々が巻き込まれちゃうよ十兵衛さんっ!
十『わわわっ!』
さてまた本能で戻ってしまう柳生十兵衛でございました。
下品な連中、どどーーっとやって来て、十兵衛、菜々の周りで大ゲンカ。
巻き込まれちゃった。
思わず奈々をかばう十兵衛。
おや、なにやら下品な連中の中に若い娘っこがおりますな。
このケンカ、どうやら下品な男連中が寄ってたかってこのおねえちゃんひとりを相手にしているようでございます。
都合上、この下品な連中の素性を明かしておきますと、この街道筋で一家を構える土地のやくざ猪吉一家であります。
今、子分AからEまで5人でひとりを襲う形であります。
猪吉子分A助『やいやいてめえ、ウチの賭場荒らしといて生きてけぇれると思うな』
子分のひとりががなります。
するとおねえちゃんの方も負けじと言い返す。あ、コレも都合上、名前を明かしておきますが、この人さくらと申します。
さくら『いかさまじゃねえかっ、このいんちき一家!』
A『インチキじゃねえっ』
B『いいか良く聞けっ、俺たちはな』
C『いのきち一家っ』
さ『名前の事言ってんじゃねえよバーカ』
そんなやり取りを観察していた十兵衛がぼそり。
十『ふーむ、今度は徳川も豊臣も関係なさそうだな…』
なんて呑気をぶちかましております。
さくらを襲う猪吉子分。さくら果敢に応戦しますが、はじき飛ばされまして十兵衛にブチ当たる。
この威勢のいいおねえちゃん、さくらはまあ小柄でございますゆえ、カンタンに弾けた。十兵衛『おわっ!』っとよろけます。
さくら、すかさず猪吉子分に掛かって行こうとして十兵衛に気がつきました。
さ『どいてよおじさん』
十『おじさん!?』
でも素直にどきます柳生十兵衛。
さくら、ふたたび猪吉一家とチャンチャンバラバラ。
チャリーン。
さくらがはじいた子分Dが十兵衛の方に突進してきて、十兵衛にドスが振り下ろされそうな形と相成ります。それを十兵衛すっとよけ、子分Dにそっと足払い。すってんころりん転がる子分D。
A『てめえなんだ!?』
B『邪魔しやがるとてめえもたたっ斬るぞ!』
十『邪魔なんかしてねえよ、むしろお前らの方が邪魔だっつーの』
A『じゃかーしぇー!』
今度は十兵衛に斬りかかる猪吉子分A助であります。
十『おーおー、なんだよお前らむちゃくちゃだなっ、オレはお前らとカンケーないって言ってんだよ!』
A『じゃかーしぇーって言ってんだよ!』
尚も掛かってくるA助であります。
十『うわっ!』
十兵衛、菜々をかばったまま猪吉一家をかわします。
十兵衛、さくらの手をすくい、さくらのドスでA助と応戦であります。さすがは天下の剣豪柳生十兵衛、鮮やかな太刀さばき、ほらチャンチャンバラバラ。
さ『ととと、なになになんだいお侍っ!』
十兵衛、さくらと二人羽織みたいな体でドスを扱い、猪吉子分たちをけ散らします。
さ『おおお?あれあれ?なんだい強ええなっ』
痛めつけられた猪吉子分達、すっかりひるみます。
A『せ、先生っ』
誰かを呼んだ。
十『先生?』
と、呼ばれて出てきた用心棒のお侍。結構、すかした感じにカッコつけた先生であります。どの辺のキャラを狙っているのでありましょう?
ニヒル感たっぷりに、ぐいとにらみを利かせたかと思うと、先生、抜き打ち様にさくら(っていうか十兵衛に)に斬りかかってまいります。
がちっ!
と、先生の剣を受け止めるさくら(っていうか十兵衛)
ちったー出来るよこの先生。十兵衛、さくらの2人羽織で必死に応戦。が、押され気味のさくら(っていうか十兵衛っ)
さくら、おおいにびびります。
さ『おお、おおい、大丈夫かよ、お侍』
十『さあな…』
さ『さあなじゃねえだろさあなじゃ』
用心棒の先生ここで一発気合いを入れた。
用『ふぬっ』
ぽきーん。
さくらのドスの刃が折れちゃった。
十『うわ、安物』
思わず次に来た用心棒先生の攻撃を無刀取りで受ける十兵衛でありました。
十『あ、いけねっ』
こんな所で出してしまいましたよ柳生新陰流奥義・無刀取り。
用『なにっ?』
いきなり素手で刀を掴まれて、戸惑う用心棒の先生。
さ『おりゃ? 無刀取りっ? ってことは?ん?柳生十兵衛?』
さくらねえさん、柳生十兵衛を見ます。
焦る十兵衛に聞こえてきた声。
美『十兵衛さまあ〜』
さらにボロボロになってやって来た美影ちゃんでありました。
サナーダ10Jr.をなんとかしたらしいよ。
十『おおっ、美影っ、後は頼むっ』
美『はっ?』
十兵衛、無刀取りを解除します。おっとよろける用心棒先生
十兵衛、さくっと菜々を抱えて、美影の脇をすり抜ける。
十『お前はまったく役に立つくの一だっ』
美『はい〜っ?』
スタコラ逃げてく柳生十兵衛。
そんな十兵衛を、さくら、折れたドスと見比べながら見ておりましたが…
さ『柳生十兵衛か〜あいっ!おいおいおいおいっ、勝負はお預けだあ〜、その内また懲らしめてやっからなっ』
猪吉子分の間をすり抜け、美影の脇をすり抜けて、十兵衛の後を追うさくらねえさん。
美『ふあ?』
A『待ちやがれっ』
猪吉子分たち、さくらを追いかけようといたしますが、美影が、訳のわからない顔で、猪吉子分たちに振り向着ます。
A『なんだてめえっ、やつらの仲間かあっ?』
美『へ? なにが?』
抜き身を持ってる自分に気づく美影であります。あ、サナーダ10Jr.を蹴散らしたまま抜き身の刀をぶら下げてた美影でありました。
美『あ…』これではまるでやる気に見えてしまいます。
A『こいつからやっちめえっ!』
美『は?』
一斉に、美影に襲いかかる猪吉子分達であります。
美『え〜〜〜〜?』
美影、また十兵衛に振られたままに猪吉一家相手にチャンバラを繰り広げる羽目になってしまっております。
美『なんだよお〜〜〜』
と、ふたたび悲鳴をあげた美影ちゃんで、今宵はおしまいにございます。
やくざどもを美影ちゃんにまかせて、逃れて参りました我らが十兵衛と菜々ちゃんであります。はあはあ言いながら道端の石の上に座り込みます。
十『なんだか今日はやけにチャンチャンバラバラの大安売りの日だな…』
十兵衛、腰に付けた水筒を奈々に渡しますとがぶがぶ飲む菜々であります。
ふうとひと息する奈々、十兵衛、水筒を受け取り水を飲む。おや、水、もうございませんでした。
あ…と、申し訳なさそうな顔をする菜々。
十兵衛、菜々の顔を見て笑います。
十『はははははっ』ちょっとやけくそ入ってる。
が、笑った十兵衛を見て菜々も笑います。
やっと浮かんだ奈々の笑顔に、心和む十兵衛でありました。
菜『あの…』
その奈々がまたもや笑みを消して真顔で十兵衛に向かい言います。
十『ん?』
菜『斬りますか?』
十『なにを?』
菜『…私は、豊臣の…』
十『ああ…斬らないよ…』
あっさりそう言う十兵衛を奈々は不思議そうに見ます。
十『斬る理由ないし』
菜『やぎゅう…十兵衛…なんでしょう?』
十『ちょい前まではね…だった』
菜『?』
十『やめたの、オレ、柳生を…柳生十兵衛やめたの。今は…フリー。ただの素浪人…』
菜『???』
十『たまに食い逃げする素浪人…』
菜『(思わず笑って)くいにげ?』
十兵衛、立ち上がり、袴のほこりを払います。
十『じゃ、気をつけてな…』
何度目の『じゃ』でありましょうか?またもや別れを告げて立ち去ろうとする十兵衛であります。
菜『一緒にいさせて下さいっ』
十『え?』
真剣な目で訴えてる奈々であります。
菜『ダメですか?』
十『うーん…ダメだな…』
菜『なんでもしますから…』
十『だめだよ…』
菜『どうしたら、一緒にいさせてくれますか?』
十『え? どうしたらって…ああ…』
十兵衛、まったく困っております。
ひたすらすがる目で十兵衛を見る菜々であります。
十兵衛、しばし菜々を見てるが、閃きまして、
十『じゃあ〜、チューしてくれたらあ〜』と、かなり思い切り助兵衛な顔で菜々に迫ります。
菜『はい…』
ところが素直に目を閉じて、ぐーーーっと十兵衛に迫る菜々であります。
慌てたのは十兵衛の方。
十『ううううそだよ、うそだよウソだってばっ』
菜々、キョトンと目を開けて、
菜『うそ?』
ちょっと傷ついた顔する菜々に十兵衛、さらに慌てます。
十『あ…た…は…びっくりした』
案外うぶな柳生十兵衛。
菜『じゃあ…』


(つづく)
| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 00:56 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 05

今宵も作者は厄介な仕事を一段落させて、なにやら心晴れ晴れ十兵衛ちゃん。

明日も早いというのに、こんな深夜に申しあげをはじめてしまいました。

美影が又十郎一派を相手にいている間に柳生十兵衛逃げおおせた。背中の美少女・奈々を森の入り口の岩持たれさせるように下ろします。
十『どうだい?傷は痛むかい?娘さん』
娘、菜々は十兵衛から顔を背けたままであります。
奈『大丈夫です
十『そりゃ、よかった
とりあえず一安堵の十兵衛。
十『又のやつ、この子は豊臣の落とし胤だと言ってたな
十兵衛、ぶつぶつ独り言。考え始めた。
まじまじと菜々の横顔を見つめる十兵衛。
菜々はちらりとそんな十兵衛の顔をば盗み見る。その目はちょっぴり憎々しげ。
十兵衛は、そんな菜々に気がつかず案外ノー天気だな。
十『ああ、いやいかんいかん。オレは何も聞かなかった
考えるのをやめて立ち上がる柳生十兵衛。
十『せっかく徳川だのなんだのという世界から足を洗ったのだ。こんなところでかかわり合いになっては元も子もない。ああ、では、なもう捕まらないように気をつけて行きなさい』
又十郎が来ないかどうか確かめたうえで立ち去ろうとする十兵衛。
が、菜々、十兵衛の着物を握っている。
十『ん?あ、ああ、気をつけてな
菜々の手を払おうとするが、離さない。
十『なに?』
心細そうな目で十兵衛を見つめる菜々であります。ああ、悪いけど、可愛い子ちゃんにこんな仕草をされたら普通は惚れてまうやろっ!
十『あ〜お前、連れとか身寄りは居ないのか?』
こくりとうなずく菜々。
またその顔が可愛いったらありゃしない。
十『居ないのかよ。ううむ、豊臣の落とし胤と言ったら豊臣家にとってはお姫さまのようなものだそれがひとりでこんなところをうろうろしていると言うのはあ、いやいや、考えるな、深みにはまるな十兵衛っ!
とにかく、気をつけてな、また襲われそうになったらすぐに隠れるか逃げるんだ、いいな
十兵衛、またもや行こうとするが、離さないまま付いてくる菜々であります。
十『いや、オレもアンタみたいなかわいこちゃんと旅をしたら楽しいとは思うがな、ま、ちょっとなんだ、困るんだ
行き掛かり上助けちゃったけど、オレはま、その辺にちょっと関わりたくないんだよ、悪いね、はい(着物から菜々の手を払って)行きなさい、ほら
菜々、泣きそうな顔をしている。また惚れてまうやろっ!
十『じゃあな、さよなら』
困りながら行こうとする十兵衛であります。
その時でありました。
野太い声をかけるものあり。
男『姫っ』
十兵衛、んっと見ると、なにやら数名のゴロツキのような男たちが近付いて来る。
男『おお姫っ、菜々姫さまっ、お探ししました。
ご安心下され。我等は、豊臣家の軍師であらせられたユキムラ・サナダが配下、サナダ10勇士が二世軍団サナーダJr.、お味方でござる。ささ、我等とともに参りましょう姫』
だが姫・菜々は、怪訝そうにゴロツキたちを見る。
サナーダJr.って、怪しい〜。
ところが十兵衛ヤギュウのアホタレはすっかり安心。
十『おお、あんたらこの娘の知りあいかね。これは良かった。えっと、菜々姫様ちゃん、お味方さんが迎えに来てくれましたぞ。良かった良かった
バカだなこいつ。
サナーダJr.の最初に声をかけた男が十兵衛をギロリと睨む。
この男の名前はサスケの介。インチキくさ〜い。
サ『貴様は何者だ!?』
十兵衛に凄みます。
十『いや、オレは何者でもない。ただの通りすがり者だ。(菜々に)じゃ、オレは行くからな達者でな
だが、行こうとする十兵衛の影に隠れる奈々。
十『あう、あ、ちょっと
可愛い。
(つづく)

| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 18:01 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 04
お待ちかね、待ってなくてもお待ちかね。『踊る!柳生十兵衛』の続きを申し上げます。
十『おいおいっ! かわい子ちゃんになんてコトするんだ!』
がっつーん!
又十郎に跳び蹴りする柳生十兵衛。ころがる又十郎。
又『なにやつっ!』
と、ここまでが前回のお話でございました。
組『おおーっ?』
又十郎柳生組が驚いている最中に、十兵衛さっさと可愛い子ちゃんを素早く助けます。
又『何ヤツっ!』
又十郎も素早く立ち直って叫びます。
ボスの声にようやく又十郎柳生組、構えます。
又『兄者?』
十兵衛を見た又十郎、兄と気がついた。
十『お前』
十&又『なにをやってるの(ですか……)?』
二人同時の台詞であります。カッコの中は又十郎のみの付けたし。
十&又『……別に……
白を切るふたり。また二人同時。仲が良いのかさすがは兄弟。
又『兄者、その女は豊臣の落とし胤っ、菜々ですっ、お渡し下さいっ!』
十『ん?(菜々を見る)』
又『その者は、豊臣家の埋蔵金の在り処を記した地図を持っているのです!』
十『ほっ?(菜々を見る)』
又『これ、本来は兄者の仕事だったのですよっ!』
十『そうなの?(又を見る)』
よくわかってない十兵衛、父・但馬守の話聞いてなかったもんね。
十兵衛一瞬の逡巡あれど、菜々を見まして結論出す。
十『かわい子ちゃん優先っ!』
やっぱりね。
又『兄者っ!』
十兵衛、菜々を負ぶって又十郎に背を向けて逃げ出す。
一方、先ほどおばんに連れ去られた十兵衛を、やっぱり『アレ、十兵衛さまじゃないかな〜』と思い直しぶつぶつ言いながら戻ってきたのは、かの柳生忍群切っての美女忍者・美影であります。
と、美影、前方から走ってくる十兵衛の姿が見えた。
美『おお、あの方じゃ。
いや見れば見るほど十兵衛さまに似ている。よし、この際本人に思い切って訪ねてみよう、あ、すまぬ、少々尋ねたきことが
美影、呑気に十兵衛に声をかけた。
走って来た十兵衛、美影と見るや
十『美影っ、あいつら頼むっ!』
言い放ってそのまま美影の脇をすり抜けて逃げてゆく。
美『え? あ、やっぱり、じゅじゅじゅ……』なんて言ってるうちに十兵衛はもう真っ直ぐ彼方に逃げて行っちゃった。
美『柳生十兵衛え〜っ!』
美影さん、指差して叫んだりなんかして。
その美影の声に反応したのは、なんと十兵衛の背中に背負われている美少女でありました。
少女の名は奈々。このお話を最初からじんわりと読み込んでおられる方は、もう奈々ちゃんが何者かはわかるはず。なにげにネタバレ。
その奈々が十兵衛の背中ではっとした。そして、今自分を担いでいる男を見ます。
奈『柳生十兵衛
何故かその目には憎しみが浮かんでいたのでございます。
一方、美影。
美『十兵衛さまっ! 申し上げたきことがっ! 又十郎様がっ!』
美影さん、そもそも十兵衛に又十郎の野望を伝えるための旅でございました。
その又十郎と又十郎柳生組が、十兵衛を追ってやって来ます。
それに気づいて焦る美影。
美『えっ? あ、又十郎様っ、まずっ!』
さっと顔を隠す美影さん。同じ柳生だから当然顔見知りなのであります。
又十郎柳生組、バラバラとやって来て、道に立ちはだかる美影にさっと剣を向けます。
頭領又十郎が出て来ます。
又『貴様、何者だ!』
どっきんの美影。顔を袂で隠して、
美『怪しい者ではありません〜』
声色変えて電ボみたいな声で言ってみる。
又『美影かっ』
美『うばれたっ
美影さん、声色のヘタな忍者でありました。
又『貴様、十兵衛兄者の世話係をやっていた柳生忍軍の美影だな。兄者の指示かっ!? 邪魔立てするとお前も斬るっ!』
美『え〜! ちょちょちょ
又十郎柳生組、抜刀し、美影に斬りかかる。
美『あれ〜? 戦うハメになってるんですけど〜っ』
美影、逃げて行った十兵衛の方を見ます。
十兵衛の姿はすでにどこにも見当たらず。
美『ちくしょー』
美影さん、ピンチっ!

(つづく)






| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 17:59 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 03
さて、茶屋のおばんにひっくくられて哀れ土下座の柳生十兵衛。
十『いや、まったくもって申し訳ない。さっきも言ったように食い逃げするつもりは毛頭なかったのだ』
おばん、またすりこ木で十兵衛をぽかんとやります。
おば『お前金持ってないんかい』
十『実は…』
おばん、またぽかり。
おば『実はじゃないだろ実はじゃっ! 世の中はね、お金がなかったら何にも買えないんだよっ! あんた侍のくせに学校でそういう事習わなかったのかいっ?』
ま、この時代に学校はない。
十『はあ、そう言えば、そういう事はいっさい、お世話係の美影がやってくれていたような……』
おばん、またまた十兵衛の頭ポカリとやって『なにをぶつぶつ言ってんだいっ! じゃ、それ置いていきな』と、腰の刀を指差した。
十『おう、これでいいのか?置いてく置いてく』
十兵衛、あっさり刀をおばんに渡します。
おば『なんだい、あっさり武士の魂を渡すなんて軽いお侍だね…』
さらに身軽になった柳生十兵衛、街道を
スキップで歩きます。
十『あ〜こりゃ体が軽いわ。もっと早く刀なんか捨てちゃえば良かったよお〜』
身軽になった剣豪柳生十兵衛、もうそりゃ踊りながら歩く。これすなわち踊る柳生十兵衛っ☆
ふと前方に奇っ怪な光景を目の当たりにした十兵衛がふと立ち止まります。
十『やや?ありゃなんだ?』
おかしな風体の侍たちに髪の毛を掴まれ、引きずられているうら若き女がひとり。
引きずっているのは、十兵衛もその顔はよく知っている。弟又十郎率いる柳生組・尾崎幹之進。
そして、またよく見ると尾崎の前に、いるではないか弟・又十郎が。なんだか家で最後に見た時は綺麗に月代を整えていたけど、今はその頭もワイルドに伸ばしてる。ちょっと十兵衛ヘアに近いじゃないの?
さらにさらに又十郎柳生組の連中も率いている。
十『なにやってんだ?又のヤツ?』
引きずられてた女が木に吊るされるように縛りつけられました。なんと、よく見ると随分と可愛子ちゃんでございますぞ。
又『地図はどこだ? 出せっ! 出さねばっ!』
鬼のような形相で言って又十郎、女をムチでしばきます。
ビシっ!
あら?なにやらハードな展開?
十『おいおいっ! かわい子ちゃんになんてコトするんだ!』
言うが早いか突進して行く十兵衛であります。
がっつーん!
いきなり又十郎の後頭部に跳び蹴りする十兵衛でありました。
すっ転がる又十郎。
又『ななななにやつっ!』

(続く)

| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 17:49 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 02
さて、十兵衛でございますが、今、天下の柳生十兵衛は団子を口に加えたまま街道を走っております。
十『しえ〜〜〜〜〜〜!!!』
その後ろからは、すりこ木振り回して追いかける茶屋のおばんでございます。
おば『待てぇ〜! こんの食い逃げ野郎!』
十『すすす、すまんっ! あんまりダンゴの絵が旨そうだったんで、つい金のない事を忘れてた。く、食い逃げするつもりはこれっぱかしもなかったんだ!』
おば『じゃあ、なんで逃げるんだ?』
十『おばさんのそのすりこ木が恐いんだよ〜!』
おば『だれがおばさんじゃ! あたしゃまだ29だっ!』
おばん若い。
ふと見ますれば、前方にあの柳生屋敷から走り出た美影が、旅姿で歩いておりました。いつのまにか十兵衛を追い越してたのね美影ちゃん。さすが忍者。
おば『おい、そこのお侍みたいなおねえちゃん〜っ!』
おばんの声に振り返る美影。
すると目に飛び込んで来たのはまず団子を加えた柳生十兵衛。
おば『食い逃げだっ! 捕まえてくれろっ!』
美影、突然のコトにそれが探してる柳生十兵衛とは気がつかず『なにっ、食い逃げっ?』
不届きものめ、この美影が捕らえてしんぜるとばかり構える。
十兵衛の方は一目で我が手下美影と気づきます。
十『うえっ、美影かよ!』
ぎょっとする十兵衛。さては俺を連れ戻しでも来たか?
慌てて顔を隠す。が、勢いあまって美影に突進。美影、捕まえようするが、するすると交わす十兵衛であります。
美影が柳生忍群なら十兵衛も剣豪。攻めるかわす攻めるかわすを繰り返し、はっと目が合う一瞬の間。
美『!?十兵衛さまっ?
いかん、ばれたと慌てて顔を隠す十兵衛。さすがの十兵衛も一瞬の隙。後ろからおばんにぼこーんとすりこ木でぶん殴られた。
十『あいたあ〜』
十兵衛、あっさりおばんに取っ捕まった。
十『あだあだあだあだっ!』
すりこ木で散々ボコボコにぶっ叩かれて挙げ句の果てに首根っこをひっぱられひっとらえられて行く十兵衛であります。
ソレを見送る美影。
あまりにカッコ悪い天下の柳生十兵衛に、美影首をかしげます。
美『十兵衛さまってことはないよね』

本日はここまででございます。
| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 17:48 | comments(0) | - |
踊る!柳生十兵衛 01
隻眼の小男ながら剣をとっては日本一、生まれながらの天才児とも申すべき柳生十兵衛三厳の甚だノーテンキな旅日記を申し上げます。

題して『踊る!柳生十兵衛』にございます。

三代将軍家光のころ。ここは江戸・柳生屋敷であります。
いま、暗い部屋に向かい合いますは大目付柳生但馬守と、その嫡男十兵衛三厳。
大目付というのはまあ、警視総監のようなもの。
今、まさに息子柳生十兵衛に、父から直々の密命が申し渡されようとしております。
但『十兵衛、次の使命じゃ。豊臣家の埋蔵金の在り処を握ると言われている秀頼の落し胤、菜々が、神州菜澤山山中に豊臣残党の者らと密かに暮らしおる事が判明した。お前の使命はこの菜々を捕らえ、豊臣の埋蔵金の在り処を突き止める事にある。
さらにその際、おそらく菜々を差し出す事に抵抗するだろう豊臣残党どもを、その理由で、ことごとく斬れ!』
厳かな但馬守のくぐもった声はその密命の内容とあいまってちょと怖い。
父にひれ伏しておりました十兵衛三厳も厳かに答えます。
十『お断りいたします』
但『なにーっ!?』
十『もう、そういうダークな仕事はご免被ります。わたくし、柳生を辞めさせていただきます』
と、いきなりの引退宣言の十兵衛。
え?柳生十兵衛が柳生を辞める?
但『なにい〜っ!』
と、ここで映画ならばどどーんと入るメインタイトル!

『踊る!柳生十兵衛』!

但馬守が口をあんぐりと開けて固まっております間に、当の十兵衛三厳は、まるで憑物が落ちた様に軽やかに立ち上がりますと、障子を開け放ち廊下と出る。
渡り廊下を鼻歌など歌いながら玄関に向かっておりますと、十兵衛の弟、又十郎がやって参ります。
いつも厳つい形相でダークな任務を遂行する兄と違う様に、又十郎いささかギョッといたします。
十『よお、又、達者でな』
と、軽い口調の兄にさらにぎょぎょとなる又十郎であります。
又『あ、兄者?』

柳生十兵衛、旅の空。何処に行く当てひとつなく、風にまかせた気まま旅。
これまで幾度も歩いた道なれど、いつもは諸藩の動向を探りに行ったり、時には無理矢理その藩のエラーを見つけ出しそれをネタに取り潰しまで持って行くなどとそりゃもうダークな使命を背負っての道中。
景色なんぞ見たこともない。
そんな仕事から解放されての足取りも軽い旅でございます。

さてその一方、こちらは十兵衛が出て行った後の柳生屋敷。
但『又十郎っ! 豊臣家の埋蔵金の在り処を握ると言われている秀頼の落し胤、菜々が、新州菜澤山山中に豊臣残党の者らと密かに暮らしおる事が判明した。お前の使命はこの菜々を捕らえ、豊臣の埋蔵金の在り処を突き止める事にある。さらにその際、おそらく菜々を差し出す事に抵抗するだろう豊臣残党どもを、その理由で、ことごとく斬れ!』
十兵衛の時とまったくおんなじことを言っている。
十兵衛がそれに逆らったのに対して、又十郎『ははっ』といい子ちゃんなお返事。
但馬守、今度は渋くわずかににっこりいたします。
但『この仕事は本来お前の兄、十兵衛のものであった。だが、やつは出て行きおった。又十郎、今日からはお前が十兵衛となれ。柳生十兵衛として、この柳生を背負って立ってくれい』
又十郎『は』
と、とまどいますがすぐに嬉しそうに『ははっ!』と答える。
但『だが、十兵衛はひとりで良い』
この言葉には又十郎もとまどいます。
但『又十郎、十兵衛を、斬れ』
又『兄者を!』
ああ。但馬守、どこまでもダークでございます。

と、但馬守と又十郎の密談を密かに廊下でうかがうものあり。
くんくん。
ちょっといい匂いのおねえさん忍び、美影であります。
つまりくノ一。
作者、よほどのくノ一好きと見た。
くノ一美影は柳生忍群のメンバーでございます。
美『十兵衛さまが』
心の中でつぶやいて…モノローグというやつですな…柳生忍群切っての美女、美影は青ざめた顔で、身を翻してその場を去ります。
美『(走りながら)お知らせせねばっ! 十兵衛さまにお知らせせねば!』
美影さん、どうやら十兵衛の味方の様でございます。

さて、そんなざわつく晩から、ざっくりと少し経ちましてございます。
ノー天気で気楽な旅を続けていたと思われていた十兵衛でございますが、うーむ、これまでは手下がいろいろ世話してくれて、諸藩に行く道を調べるのも手下の仕事。十兵衛はそこに乗っかっているだけだったので、一体今自分が何処にいるのかさっぱりわからない。それどころか、なんだか腹も減ってきた。そりゃもう柳生屋敷を出てからしばらくの間食べていない。
武士は食わねど高楊枝も、限界がある。
十『えーと、腹が減ったら飯だよな』
当たり前のコトを恐る恐る言っている十兵衛であります。
ふと前方に見えるは、街道の茶屋。そして茶屋の店先にたなびく団子の暖簾。
あら旨そうでございます。十兵衛、引き寄せられる様に茶屋に入る。
十『おばさんコレね』と茶屋のおばんに暖簾を指して団子を注文。
おばんにこにこ『はいよ』と皿に乗せた団子を持って来る。
むさぼり食う柳生十兵衛であります。
食う食う。とても日本一の剣豪には見えない様だよ。
ふと、ふところが気になった十兵衛、財布を取り出し中身を覗く。
ぎょ?
あんまり持ってなさそう。そういや身一つでポイと柳生屋敷を出てきちゃったんだ。
十兵衛、ちらっとメニューを見る。
「団子 三文」
安いね。でも十兵衛はぎょっとした。三文もないんかい。
しかも、もうだいぶ食べちゃったよ。10本はいっちゃったね。こりゃまずい。
そっと茶屋のおばんを振り返る柳生十兵衛。
ぎろんと十兵衛を睨む茶屋のおばん。
どきんとする十兵衛であります。こりゃばれてるんじゃないの?
おばん、だいぶ怪しい顔してましたよ十兵衛の旦那。


(つづく)
| 大地丙太郎 | 踊る!柳生十兵衛 | 16:41 | comments(0) | - |
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